2017.02.26


2月末、競馬の世界は引退の時期ですね。

寒さが若干緩んでいたでしょうか、パークウインズ府中のスタンドでしばらく座っていても大丈夫でした。最終レースも終わり、ホットコーヒーをすすりながら、ターフビジョンに映るメイショウの勝負服を観ていました。

武幸四郎、引退。オースミタイクーンのマイラーズC、しっかりリアルタイムで確認しています。同日中山ではランニングゲイルの弥生賞ですよね。4コーナーのコーナリングもろくに観察できないペーペーでしたが、兄弟同日重賞制覇、デビュー戦で重賞勝利など、記録に残ることはしっかり理解して観ていました。

20年かぁー。G1を6勝、700勝近い通算勝利を挙げた中堅ジョッキーを見送るとは、自分がファンをやっている時間の長さもいっしょに噛み締めちゃいますね。区切りですので、いくつか印象的なレースをものしておこうと思います。


真っ先に浮かぶのは2014年の天皇賞(春)。ウインバリアシオン、単勝勝負していました。明確に武幸四郎「だから」買ったG1ですね。当日にシュタルケから乗り替わりで騎乗することに。その速報はスマホで、ウインズ後楽園の長いエスカレーターを上りながら確認したのを覚えています。腹をくくるまでの逡巡と、4コーナーでキズナより先に追撃を開始したときの高揚感、これもまだ鮮明ですね。幸四郎→シュタルケ→幸四郎という乗り替わりの顛末含め、当時の記事は以下にて。
more than a DECADE 天皇賞(春)

ただ、制したG1でいえば一緒に喜んだ記憶がほぼないというw ここで幸四郎かよ!というやられた感覚のほうが強いのは、人気を背負っての勝利がメイショウマンボの秋くらいだからでしょうね。ソングオブウインドなんか完全にやられましたしね。あの時はドリームパスポートが本命でした。あー就職活動中でドリームパスポートみたいなうまい引っ掛けもあったなぁw

個人的にはG2、G3で2着している時のほうが印象深く、記憶と記録をすり合わせるべく過去のデータを覗いて見ました。ジョッキーを軸に調べるのはJBIS-Searchよりnetkeibaですね。
武幸四郎の年度別成績|競馬データベース - netkeiba.com


ちょっと癖の強い馬や本番ではちょっと足りなかった馬をクラシックに運んでいたんですね。エイシンテンダー、ポイントフラッグ、ローマンエンパイア、リトルアマポーラ、トライアンフマーチ。どの馬も幸四郎がクラシックまで運んでいます。そしてどの馬も、クラシックで結果を残せず、手を離れてそのまま乗ることがないのも同様。

特にG1の有力馬について、以前はお手馬の乗り替わりにもっと心理的ハードルが高かった気がしています。マカヒキのような、ダービーを勝って乗り替わりという柔軟さは、よくもわるくもなかったはずで。幸四郎の場合、リトルアマポーラが典型的と思っています。あの年のクラシックはリトルアマポーラと一緒に戦っていました。その分エリザベス女王杯は的中できたわけですが、乗り替わりはやはり複雑でしたね。

ローマンエンパイアの京成杯は府中のスタンドで生観戦でした。その年は東京競馬場の改修で、1月の中山開催を府中にもっていって秋の府中をまるっと中山に、という調整があったんですよね。ヤマニンセラフィムとの同着。ローマンの単勝をもってやきもきしていました。


2着の惜しさはクラシックのお手馬に限らず。メイショウバトラーで重賞2着3回という惜しい記録も見つけました。ダート転向前の記録。交流重賞の常連となってからはお兄さんの騎乗数が多いですからね。あまりイメージにはありませんでした。それでいうとレマーズガールでも端午Sで2着していたり。

ブロードアピールとは重賞2勝。通算13勝していますが(それ自体がすごいわけですが)、もっとも勝ったジョッキーが武兄弟、いずれも3勝。府中で後方一気を先にやったのは弟の方で(根岸Sですね)、どうやらそのときは怒られたらしく。後に兄が同じことをやったとき(府中のガーネットS)は大絶賛だったとネタにしていた?記憶があります。


こうして振り返ると、いろいろなチャンスに、いろいろなタイプの馬に、大きく崩れることなく応えていたように見えますね。引退式のあいさつにあった「20年間、自分なりに精いっぱい頑張ってきました」というのは、ほんとうに大きく括った言葉なのでしょう。もちろんきれいな話だけではないでしょうしね。いろいろありました。

もしどんなペースも前で受けられるような有力馬が回ってきたとき、どうやってチャンスを活かしていたでしょう。筋力をつけにくい長身ですから、引っ掛けながら先行するような馬は合わなかったかもしれません。それも含めてクラシックで人気を背負う姿は見てみたかったですね。


最後に。

引退式自体は淡々としたものでした。胴上げでカラダがよじれてヘンな姿勢になったのが面白かったくらいで、花束贈呈、本人のあいさつ、写真撮影と、明らかにエモーショナルな瞬間はなかった認識です。基本シャイな人柄と思っていますので、あの雰囲気は「らしさ」と映っていました。

メイショウマンボのオークスが念頭にあるせいなのでしょうかね、ニュース記事では「涙はなかった」というひと言が但し書きのようにはいっていまして。口元に力を込めながら、次を思い描いて区切りをつけるべく引退セレモニーに臨んだ姿を形容するには、ちょっと野暮だなぁという感想がございました。十分、よかったと思っています。


武幸四郎厩舎、という響き、楽しみですね。
おつかれさまでした。



※追記
書き終わってから、2001年のエリザベス女王杯で本命にしていたのを思い出しました。大接戦でしたね。そう考えると、数字にでていたかはわかりませんが、京都得意だったのかもしれないですね。…この調子で追記していくと終わらなくなりそうw

2015.09.10

既報の通り、週が明けて騎手免許の取り消し申請は受理されました。藤田伸二、引退ですね。

週中の今日は私用で有休を取っていました。夕方前にはあれこれと藤田伸二を記憶から引っ張り出す時間を得ております。あ、雨足が強くなる前に自宅に戻れたのはよかったようです。週末まで台風の影響が残るようですし皆さまも引き続き用心くださいませ。

「騎手の一分」は読んでいましたので「電撃引退」の文字には違和感を覚えるところ。詳細を知らない層に訴えるにはよいコピーなのでしょうね。いまかぁ、とは思いましたが。思ったより冷静に受け止めております。


フサイチコンコルドのダービーで競馬に覚醒した自分にとって、藤田伸二は、…実はそこまで特別視してきた訳ではないんですよねw 身も蓋もない表現になってしまって申し訳ないのですが、ファンをはじめてしばらくは有力馬に乗ってくる怖いジョッキーのひとり、という認識が続いておりました。このあたりはジョッキーに嵌ったわけではなかった、ということなのでしょう。

全然思い入れがないわけではないあたりが、好きなり嫌いなりスパッと語りにくいところ。一番古い記憶、「藤田だから」買っていたのはフサコンではなくシルクジャスティスでした。ダービー、ジャパンカップ、有馬記念と本命にし続けた自分はほんとに懐かしいですねーw 自分の馬が強いといい続けての97年有馬記念。後年振り返って、結果が伴わなく追い詰められていたという本人のコメントに触れた記憶があります。いまいま改めてレースを観ると、よく本命にしたなぁとw フサイチコンコルドの鞍上でなければ注目していなかったのだと思っています。

レース自体もすばらしく。オリビエ・ペリエのエアグルーヴが敢然と横綱競馬で抜け出すところを、超攻撃的な武豊マーベラスサンデーがねじ伏せにかかる直線。静と動、勝負どころからの2頭の手応えは目立つんですよね。対照的に4コーナーでシルクジャスティスを探せた方はすごい着眼点をお持ちだと思います。レース未確認の方には是非。必見、と書いておきますね。
9R 有馬記念|1997年12月21日(日)5回中山8日|JBISサーチ(JBIS-Search)


藤田の成績をゆっくりなぞる時間が取れた結果、こんなページから情報を取っております。netkeibaの成績。年度別、1~3着別で成績を一覧することができます。年度ごとの2着を通して観る、などというジョッキーには失礼な検索も可能になっています。馬券を買う側には重宝しますね。
藤田伸二の年度別成績|競馬データベース - netkeiba.com

眺めていて気がついたのは、重賞戦線でお手馬にしていた馬の2着。クラスを問わず、たいがい複数回見つけることができまして。ダンツキッチョウ、アイポッパー、チアフルスマイル、ブロードストリート、タガノゲルニカ、ヒルノダムール。一発で結果を出すというより惜敗を経ながら重賞に手が届く、また重賞ウイナーを安定して活躍に導く姿が数字から読み取れそうです。

そういえばアドマイヤドンやビワシンセイキのように手を離れてからさらに活躍した馬もいましたね。もちろんそれぞれ事情は異なるのでしょうが、先を見ながら騎乗していたことが暗に含まれているようにも受け取れます。

また、思い出したのがグレースアドマイヤの府中牝馬S。折り合いを欠きながら早め先頭、ふわふわしているメジロドーベルをトニービン感たっぷりのロングスパートで追い詰める姿も思い出しました。本命だったなー。近藤英子オーナーの最初の頃の持ち馬。確かブリリアントベリーとともに小林稔師が購入を勧めた、と優駿だったかな?読んだ記憶があります。いずれも藤田騎乗で勝ち星がありますね。


さらにさらに、先日の新潟記念を勝ったパッションダンス。アドマイヤキッスの下、と気がついて久しぶりに当時のローズSを観返してみたところ、思わぬ発見が。中京代替開催の2000m、アドマイヤキッスは13番枠から二の足を求めないスタート、1コーナーまでに最内に潜り込み、直線最内から外へ展開して粘り込みを図るシェルズレイを交わしてゴールしました。…勝ち馬のコース取り、96年のダービーとよく似ているなぁと。馬番もいっしょですしね。

えぇ、もちろんアドマイヤキッスの鞍上は藤田ではなく武豊です。ただ、インを取って勝負をかけるレース観は通底しているのかなーなどとイメージが膨らみまして。懇意にしている先輩後輩だからなのか、トップジョッキーの辿り着く共通見解なのかはわかりませんけどね。あ、カンパニーの産経大阪杯、2着マッキーマックスの藤田にも近い判断を見ることができます。



…つらつらと書いてきましたが、実は秀逸な回顧を目にしておりまして。このくらい短くてよいんですよね。騎乗スタイルは書かれていることと変わらないイメージを持っていました。
藤田伸二が突然の引退 - 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog

書かれている通り、奇をてらわない戦略を腹を据えてこなす度胸があるかないかもまた重要。たとえば秋の開幕週の中山を外々をまわして差しきるキストゥヘヴンは、この鞍上の度胸なしでは見られなかったと思いますしね。自身が武豊TVでうまくいったと語っている通り、フサイチコンコルドの菊花賞はまさに正攻法、こう乗るべしという手本のような運び方と理解もしています。


本人が引退の理由、背景としてあげたエージェント制については、引退とは切り離した文脈で議論が進むことを期待します。ことの是非はともかく、あくまでジョッキーひとり分の弁ですのでね。エージェント制の恩恵をしっかり享受したジョッキーが新潟、小倉、札幌の各リーディングを獲った日に引退というのが、何ともいえないコントラストを生んでしまっていますけれども。

個人的には引退後にゆっくり言葉にしてほしかったかな。競馬の世界に引き続き関心を持ち続けていくのなら、騎手としての幕引きはより「静か」に進めてほしかった、という思いもあります。このあとカフェバーにいる?らしいことも含めて、引退のメッセージはこちらから。
藤田伸二騎手引退メッセージ UMAJIN.net


あー、よろしいやん的ないい時期の打ち出し方が基本肌に合わないのもありますねw いや、あれは肯定的に受け取っているんですよ。自分がなじまないだけなので。エンターテインメントとしては全くよろしいやん、とはいえないかもしれませんがw 自分から発信する力とその自己顕示の程度感に少し過剰さを覚えていたのは事実ですが、ただそのことで忌憚ない言葉を目にすることもできましたから、是非は何とも、でしょうか。自身が努めて「男」を打ち出していた、という認識込みで観ていましたよ。あーでもとりあえず上半身裸のGallopは買いにくかったやんw



最後に。

先ほど96年のダービーを見直してみました。鞍上に注目するとまた違って見えますね。あー、このあとトランセンドVSスマートファルコンの武術の演武の型をみるようなJBCクラシックも堪能しようかな。こちらもまた味わい深い魅せ方になっているはず。…ほとんど晩酌はしないのですが、今日はやんちゃ水をお供にしてみましょう。計らずも休日ですし、飲んでもよろしいやん、ということでw


上体の筋力全体でリズミカルに手綱を引き、押すではなく、ひじのスナップで前方に力を送り出すような独特な追い方。見られなくなるのは残念の一言です。あのダービーの記憶にはそのシルエットが付随していますのでね。

自分の競馬の端緒となるダービーを制したジョッキー。改めて、それだけで十分過ぎるほどの感謝がございます。
長い間、お疲れさまでした。


2014.01.05


ゆるゆると寝正月でした。

久しぶりに時間を区切らずに過ごせるお休みでした。数量化するばかりが時間を有効に使うことではないよねー、などと思いつつ、有馬の週のレース映像や積んでおいた未読の雑誌に気兼ねなく目を通していました。あー、ある意味とても駄目な過ごし方ですねw

優駿1月号には「G1 100勝の軌跡」と題して島田明宏さんが寄稿していました。JRAだけでなく海外、地方の成績を含んだ記録のため無関心を装われているとは、記録達成したご本人の弁ですが、ようやくまとまった記事に出会えたかな。他誌でやっていたらまだ気づいていなくてすみませんということで。

記事では100勝すべてのレースと勝ち馬を時系列で一覧、100勝の内訳を距離別、レース別など切り口を変えてデータ化もしています。これを眺めるだけで飲み明かせる感じですねw 自分は22勝目、ダンスインザダークの菊花賞からリアルタイムで観ています。

のちにG1格付けになったレースが含まれていないのはこの一覧で確認できました。アグネスワールドの全日本2歳優駿とか、ユートピアのゴドルフィンマイルとか、ステイゴールドのドバイシーマクラシックとか。

…勘違いしていたのもありましたね。ユートピアの全日本2歳優駿(河内)とかハーツクライのドバイシーマクラシック(ルメール)とかを脳内で勝手に武豊の手柄にしていたりw 一方でアドマイヤムーンのドバイデューティーフリーやJBCスプリントのマイネルセレクトあたりはすっかり忘却の彼方でして大変申し訳ございませんでしたw


ちょっとだけ記事内のデータを紹介。最多勝利レースは天皇賞(春)とJBCクラシックでそれぞれ6勝でした。JBCクラシック、勝っているなぁとは思っていましたが、天皇賞(春)と同列に並べられると認識が改まりますね。

金沢のJBCで「ミスターJBC」という場内実況を耳にしていまして、その呼称にはちょっと違和感を覚えていたのですが、少しだけ納得いたしましたw 平成の盾男という呼び方に比べると馴染みにくい響きではありますけど。

…しかし、盾男と伊達男と引っかけているとずっと思ってきていますが、いまいまは伊達男って表現は使わないですよね。平成の盾男という表現自体、一種の慣用句のように捉えている方もいらっしゃるかもしれません。



さて、せっかくなので少々お遊びを。僭越ながら、100勝のなかから個人的な基準でいくつかピックアップをしてみました。独自の見立ての部分は、そうかもね、くらいで受け流していただけると。後年振り返るであろう自分に向けつつも、観たことがない方は是非映像でご覧くださいませ。



1997年天皇賞(秋)、エアグルーヴ。

4コーナーから直線、バブルガムフェローをロックオンする人馬が見どころ。ちょっとだけウオッカの天皇賞と重なる運び方かな。G1でなければ前年のクイーンC、イブキパーシヴとゴールデンカラーズのほうが濃いいマッチレースなのでこちらも是非。


1999年天皇賞(春)、スペシャルウィーク。

2周目の2コーナーから向こう正面、かかり気味のサンデーセイラを利用してペースを落としかけたセイウンスカイにプレッシャーをかける容赦のなさ。くしくも菊花賞でセイウンスカイが息を入れていた地点、文字通りの意趣返しと受け取っていました。それこそ倍返しですよね。この頃の武豊はそうした凄味が前面にでていた印象があります。スペシャルウィークに自在性という武器を求めていた時期でもあったでしょうね。


2001年NHKマイルカップ、クロフネ。

これはもうジョッキーの胆力を堪能してください。よくあれだけ待って、よくあれだけ伸ばしたなぁという豪快な差し。クロフネ自身は武蔵野Sとジャパンカップダートで伝説化していますが、鞍上があの特異なストライドを最大限尊重しながら結果をだしたという意味で、こちらもまた印象深いです。


2005年ジャパンダートダービー、カネヒキリ。

盤石の展開という意味でこちらを。ディープインパクトで3冠達成している年、脂がのっているというべきでしょうか、ため息がでるような安定感を堪能できると思います。大井が苦手といわれていた時代はずいぶんと過去のものになりましたねぇ。大井のG1初制覇であるゴールドアリュールのジャパンダートダービーと比較してみても面白いかと思います。


2005年JBCクラシック、タイムパラドックス。

こちらは向こう正面から3コーナーへの大胆なコース取りが見せ場。いったん膨らませてからアクセルを踏んで、アウト-インで3コーナー進入。かなりヤバいです。小回りで直線の短いコースに対し、ストライドロスを抑える妥当な戦略を見ることができます。というか、このコース取りとこのアクセルを踏むタイミングでなければ負けていたレースでしょうね。大胆かつ緻密なレース運びを堪能できると思います。


2013年マイルチャンピオンシップ、トーセンラー。

100勝の区切りに象徴的なレースを見たように思っています。先手を取るスタートと慌てずとも置かれない位置取りと、4コーナーでの他馬との手綱の動きの差と、直線外に出すまでの流れる動きと。そして鞍下の爆発的な末脚と。武豊ってどんなジョッキー?という初心者の疑問には、このレースを見せればOKなのではと思っています。極上です。



…ピックアップ作業を始めてから思ったのは、2着3着に負けたレースもまた印象深いことですね。マーベラスサンデーの天皇賞(春)とか、シーキングザパールのスプリンターズSとか、スペシャルウィークの有馬記念とか。

挙げたレースはどれも、1番人気にどう対抗するかというチャレンジ精神が漲りまくっているレースばかりです。マーベラスサンデーでG1に挑むときはかなり攻撃的でしたしねぇ。いまでいうならワンダーアキュートで他の有力馬にどう挑む、という図式に例えても遠からずと思います。

こうやって対象範囲を広げると本気で収拾がつかなくなりますので、はい、このあたりでw




最後に。

あれこれ思い出しながら再確認したこと。かなり前から認識はしていたのですが、レース前の武豊のコメントには「わくわくしています」「楽しみにしています」「期待しています」という表現が多用されると思っていまして。

さすがに全く見込みのない馬ではコメントしづらいでしょうし、常時テンションの高い状態でコメントしているわけでもないのですが、有力馬に乗るときは決まってこうしたコメントが聞こえてきている印象があります。おそらくはご本人、努めてそうした言葉を選んでコメントしているのでしょう。

新聞、テレビで見栄えしやすいコメントをだせることも稀有な所作ではあるのですが、なにより素晴らしいと思っているのはこのわくわく感を自然に醸成する発信力だと思っています。他のジョッキーでは自分の心構えはコメントしていても、わくわくしますね的なコメントはあまりお目にかかれない認識がありまして(それも説得力があるわくわく感ね)。

大勢を巻き込む力は「競馬場に足を運んでください」よりは「わくわくしています」の方がきっと強いんじゃないかなと。そうした期待感をつなぎ続ける発信力という点でも稀有な存在であると理解をしているところです。

自分はその醸成される期待感を素直に受け取ってきました。熱狂的な信者ではありませんが、こうした点に気づいてからはより好きな存在になっています。武豊のなにがすごいかと問われる時は(そんなに機会はありませんがw)、このわくわく感をつないでくれることを努めて挙げるようにしています、ホントに。



次は101勝を目指すとのこと。まだまだご本人からは期待感をつなぐコメントが聞こえています。すごいなw なんかこっちも頑張らないといけない感じですねw


さて、明日は2014年の競馬初め。わくわく感をもって金杯に臨みますよー!
金杯で乾杯しないといけませんからね!

2013.02.25


ずいぶん時期がずれてしまったようにも思いますが、ようやく落ち着いて味わう時間ができたので改めて。

安藤勝己、引退。「パイオニア」としての総括はあちこちの記事で確認しました。大きな文脈の中での価値づけはこれからも繰り返し語られることで強化されていくのでしょう。本人の口からはたまたま最初が自分だったんだという、謙遜に満ちたコメント。…まぁ、いい意味で多少天然の可能性も否定できないのですがw


netkeibaのデータベースが一番フリカエリに適していました。年度別、着順別の成績を眺めながら「あったねー」などと浸っておりました。ひととおり予想がまとまってきたあたりでやってくる漠とした怖さ。でもアンカツだからなぁ、という見限れない感じ。この感じが自分のアンカツ像でした。中央の累計で連対率3割、複勝率で4割を超えてきますからね。数字もそれを裏付けているようです。
安藤勝己の年度別成績|競馬データベース - netkeiba.com

キングカメハメハもダイワスカーレットもビリーヴもグラップユアハートも思い出深いですね。そう、スズカマンボも懐かしい。あの天皇賞(春)はトウショウナイト1頭軸の渾身の3連複BOX。アンカツだからなぁ、という理由で相手に含めたのは覚えていますよ。1、2、3着がすべて相手にはいっていてのトウショウナイト4着。ホント懐かしいですね。。。



個人的に印象深いレースは2007年日経新春杯、トウカイワイルド。当時はゴール直後呆気に取られていました。内からなんかきたけど何だ?という感じでしたね。

1番人気はアドマイヤフジ。この時点で懐かしさ満載ですね。アンカツのトウカイワイルドは5番人気、3番枠から中団インベタの戦略でした。ラップは以下の通り。

12.5-11.2-11.0-13.0-12.8-13.0-13.8-12.8-11.7-11.7-11.6-12.3

3コーナー過ぎで逃げたサイレントディールが後続に追いつかれペースがあがる展開。残り4ハロンからのスパートだったのはラップで見て取れます。今見れば各馬ラストで脚があがるのは道理なのですが、それでも当時の自分はアドマイヤフジにピントを合わせておりました。

トウカイワイルドのコーナー順位は9-7-10-6。改めて見返したのですが4コーナー手前の下りではほぼ最後方。鞍上の動きを見る限りはブレーキを踏んだのではなくアクセルを踏まなかったようです。自然、位置取りは下がり、直線でインをついて巻き返すような末脚につながりました。エクイターフで前受けが定石化しつつある昨今、こんな乗り方はなかなかお目にかかれないでしょうね。なんといいますか、展開に嵌まるという表現がありますが、この場合は展開に嵌めるといった方がよいでしょうか。



仕掛けるポイントをずらす騎乗。戦略的に理解できてもレースで実践するためのメンタルはそうそう養えるものではないでしょう。色気を出さずに勝負するメンタリティ。武豊TV!IIでは悟りの境地とジョークになっていましたけどねw

例えば、ブエナビスタの後方待機策。この間のフェブラリーS後に開かれたトークショーの中でも岡部さんが熱く質問していましたが、ブエナビスタがスピード一辺倒のタイプにならなかったのはこのアンカツの見立てが大きかったようです。当時は結果が出ているからという理由で頑なと映るほどに待機策を変えませんでした。乗り替わり後の脚質の幅はアンカツの仕込みがあってこそ、なのでしょうね。

亀谷敬正さんの著作「安藤勝己の頭脳」ではアンカツ本人の言葉で騎乗馬とレースに対する捉え方が様々に解説されているはずです。はず、になってしまうのは、部屋を探したのですがないんですよねー。買って読んだのは間違いないのですが困ったものです。読み返したいので頑張って探しますよーw 亀谷さんは競馬王でダビスタをやりこんでいたイメージが強いのですが(古い話で恐縮です)、2007年の著作は非常に有意義な議論だと思っています。すばらしい仕事に感謝。おすすめです。
Amazon.co.jp: 安藤勝己の頭脳 (競馬王新書): 亀谷 敬正: 本



引退会見からこちら、オグリキャップはもちろん、ビリーヴやキングカメハメハ、ダイワスカーレットなど、著名なお手馬を思い出の馬として挙げる記事を多く目にしていますが、競馬ブックのインタビュー記事ではスズカマンボの天皇賞を印象深く語っておりました。引退の経緯についてもそのブックの記事や競馬ラボのインタビューでは具体的に語られています。媒体なりインタビュアーなりで語り口を選んでいるようで、今後のアンカツのコメンテーター的な活動が楽しみに思えています。競馬ラボの記事は記者会見の全部?なのでしょうかね。話題の選び方運び方はたとえば武豊Jとは違う面白さがあります。
引退の安藤勝己騎手「これからは少しでも競馬の魅力が伝えられれば」

ディープはおバカさん的発言が「毒舌」と紹介されることについては、ねぇ、マジョリティがいい意味で面白がれるといいなぁと。発言は先日のトークショー、現地で聴いていましたが大笑いさせていただきました。ダイワスカーレットもおバカさん扱いでしたねーw

騎乗者が促していないのに一生懸命走るのは(ずる)賢さに欠けている、という趣旨の文脈を切り取ってしまうと語弊を生みやすいのでしょうが、前後の文脈を心得ているオーディエンスなら短いセンテンスでポイントを雄弁に語った得難いジョークと受け取れるはずですのでね。

発言の表情は異なりますが、フェブラリーSの中継でカレンブラックヒルとエスポワールシチーに触れたコメントは的確なそれでした。今後の活動次第では、その馬の直接の関係者でなく外から見ている場合に何が推測できて何がわからないのか、その按配もアンカツの言葉を通じてピントを合わせることができるかもしれません。Twitterも始められたようですので、これからの発信は注目していきたいと思います。



そうそう、ダノンシャンティ…

…ちょっと尽きない感じになってきたので、締めましょうかw

ダイワスカーレットを指して「一度ユタカちゃんに乗ってほしい」というのも本人の人柄をよく表していると思います。こちらは武豊TV!IIで確認。2010年にゲスト出演した際の発言ですが、なんというか勝負を捨てているのではなく、勝負より好奇心が勝っているというような印象をもちました。自分が下手な分もっとうまく乗れるんじゃないか、というニュアンスでしたのでね。ここだけ切り取るととてもいいひとなのでしょうが、笠松でブイブイいわせていた(という表現をあえてしてみますがw)頃からの変遷を想像すると愛されキャラかつ喰えないキャラ、なのでしょう。乗ってほしいのコメントの件、騎手会長は苦笑いでしたしねw

というわけで改めて武豊TV!IIへの出演から、お願いしたいなーと思っていますw


記者会見からこちら、こんなにカラッとした引退は覚えがないですね。
お疲れさまでした。有難うございました。



はい、このあと、共同通信杯から毎日杯、NHKマイルまで、ダノンシャンティをフリカエリたいと思いますw


2012.02.05


携帯用のWebコンテンツ、サラブレMobileで
「西塚助手が聞く!」という連載があります。

以前は西塚厩舎、現在は尾関厩舎の調教助手さんですね。
尾関厩舎、昨年だとモンストールが重賞を勝ちました。

一応はコラムコーナーであって、ご本人がコラムを書かれる回もありますが
大抵は競馬関係者とセッションwするコーナーになっています。

あえてセッションと書きましたが
インタビューとも対談とも違うテイストなんですよね。
ご自身がバンド活動していることから、
この表現がしっくりくると感じています。
内輪的ぶっちゃけ話も多いですよ。


2012年、年明け最初のゲストが田辺でした。
4週にわたっての連載ですので、今週で完結したばかり。

このコラムを長く読んでいる方には説明不要ですが
西塚厩舎時代から騎乗依頼する側される側であり
昨年、関東3位とブレイクするはるか昔から
このふたりの親しさはこのコーナーでも
よくにじみ出ていました。

このタイミングでゲスト出演ですので
昨年ブレイクしたけど、その後どう?という
テイストで話は進みます。



まぁ、なんというか、あくまでいい意味ですけどね、
まれにみるざっくり感でしたw



気心知れている分、ぶっちゃけトーク満載でした。
有料コンテンツなので引用は控えますが
まぁストレートでシンプルな表現が続きますw

今年の目標は?と改めて水を向けられて
ひらがな2文字で即答する感じとかw

良し悪しあるにせよ、昨年他の媒体で見られた田辺の打ち出し方は
取材者によってかなり編集されていることがよくわかります。
いったん漂白されて着色されている感じかなw




ちょっとそれる格好になりますが、
マスコミ各位の打ち出し方に
一定のプロットが用意されること自体は
全く問題ないと思います。

たとえば取材対象の言葉をそのまま伝えた時に
収拾がつくのかという問題はありますし。
一方で様々なファンが受け取りやすいキャッチな記事に
仕立てるのも必要なビジネス感覚なわけで。


ただね、「…ですよね?」「はい」という誘導的な取材をもとに
取材する側が書きたいことを書こうとする強要の姿勢はどうでしょう。
正直それは、情報を媒介するという行為そのものの信頼に関わります。
辛辣な表現に映るかもしれませんが、編集と歪曲は別物です。

以前から追い切り後の関係者インタビューにも感じていましたが
特にネット以前の一部マスコミに見る取材力の低下。
大げさではなく競馬衰退の一因になり得る要素です。
語られてこそのケイバ、その語る力が落ちているわけですから。

このあたりが取材対象となるジョッキーによって
きわめて赤裸々かつ無邪気に、そして端的にトークされています。
あの記事はらしくないな、そんなこといってもさ、的な感じですねw
その(おそらく無自覚な)シニカルさに爆笑してしまいました。




田辺にフォーカスを戻しますね。

確かにざっくりな表現が多いのですが
読後感として、ケイバへの真摯な姿勢は伝わってきました。
…おそらく本人、こういう表現をされるのは苦手でしょうw

背中の感触や精神面など、もろもろ解説的なコメントを加えた結果として
「わからない」というんですよねw

そうなんですよ、やってみないとわからないから競馬なんですよ。
最近そうしたストレートな表現に出会っていないとも思い至り
ちょっとはっとさせられました。

田辺のひととなりがよく垣間見える記事と思います。
お金払っても読みたい方は是非。
最近はやりのステマとかではなく、まぁステマでもいいんですけどw
おすすめです。



並行して読んでいた「大穴の騎手心理」でも
田辺が取り上げられていました。

ホストが変わると引き出される言葉も変わりますね。
うってかわって、こちらでは田辺独自の分析が
前面に出た内容になっています。

読んでいて感じたのは
対象の特徴を「シンプルに」とらえる力。

例えば新潟1000mで外が有利な理由について
さくっと「ラチを頼って走れるからじゃないですか」と一言。
シンプルですよね。

詳しくみれば馬場状態などいろいろな要素が複合するわけですが
馬上のスピード感で有利不利を認識して
かつ対処のアクションを可能とするには
このくらいシンプルにとらえていた方がよいのかもしれません。

効率のよい理解、という表現がよいでしょうか。




その判断力は、実際のレースぶりにも表れているものと
勝手に気づいております。

昨秋の府中では、府中牝馬S、富士S、アルゼンチン共和国杯と
3つの重賞で連対しました。

いずれも外寄りの枠にはいり、終始馬群の外&後方追走から
ほぼ直線だけで勝負圏内までもってくるという内容。

事実として、重賞で上位人気に乗ることは
昨年まであまり経験してこなかったはずです。

馬群の外&後方追走が妥当な戦略であるかどうかを
レース中の馬上で判断できるかどうか、は
結果的に試されていたことになるのでは、と受け取っています。
またこれを豪快かつ着実にこなしましたね。


特に府中牝馬S。

道中、インに入る素振りは全く見られず。
早々に切り替えて微動だにしない胆力が垣間見えた、というのは
ほめ過ぎでしょうか。


一方でアルゼンチン共和国杯の3コーナー。

手綱で強く当たらず、腰と膝の屈曲での扶助。
ハミを詰める前の段階的なシフトアップを試みたのでしょう。
乗っていたのは復調途上のオウケンブルースリ。
ジャングルポケットの特性からも、急加速を求めず
長くアクセルをふかす、見事な騎乗と映りました。


あー、一昨年以前では乗っているウマの力が足りない分
インにこだわって着を拾う、というような
コメントをしていた記憶があります。

ウマの能力や馬場状態など、条件に合わせて
その乗り方を変えているなら
機を見て敏に応ずる「補正」する力をもっていると
言い換えられそうです。

エイシンアポロンだと毎日王冠のイン先行から
あっさり切り替えての富士S制覇ですからね。




また、あまりこうした語られ方は見当たりませんが
個人的には「リズムであおる」追い方をする印象があります。

先に例示した3重賞では確認できますが
ウマ自身の首のリズムよりわずかに早く押しているんですよね。
ウマからすれば軽くあおられたような形になるのではないかな、と。

で、このリズムが一定の強さでゴールまで崩れない。
これが大きな特徴と思います。
フィジカルがしっかりしていないとブレますからね。

アニメイトバイオが府中の直線をぐんぐん煽られていく様は
ちょっとエモーショナルですよ。




以前から注目していた、という種類の自慢ができる
クラスタではありません。

信頼感が増したのは、レパードSのタガノロックオン、
紫苑Sのデルマドゥルガーあたりでしょうか。
どちらも負けたレースですが、判断の確かさに注目した次第です。

あー、強くて崩れない追いのリズムでいえば
デルマドゥルガーは必見です。すばらしい。

自分がその評価を絶賛補正中なのですが
いまいまの期待感を書き記しておきたいと思います。
引き続き注目してまいりますよ。




最後に。

ヘンな邪推かもしれませんが、立場を与えると
ちゃんと引き受けてこなすタイプかもしれません。
後の騎手会を背負うかも?ほんとかよw
でもけっこう外していないと思っているんですけどね。
どうでしょう。

できれば、サラブレMobileの時のような
テンションを損なわないでほしいです。

追い切り後のコメントとか、いくつか気になったことを説明したうえで
「でもよくわからない」でよいと思っていますよw
毎週それだとライトユーザーには酷でしょうけどw