2015.01.31


時節を外した投稿ではございますが。

2014年の年度代表馬はジェンティルドンナ。2012年に続く2度目の栄誉となりました。レーティングを加味するとジャスタウェイかなーと思っていたんですけどね。

JRAの発表はこちら。
「2014年度JRA賞」決定!年度代表馬はジェンティルドンナ号!

投票結果はこちら。
2014年度JRA賞競走馬部門 記者投票集計結果

やはり3歳は牡馬牝馬ともに票が割れましたね。票差と実力の評価とレースの印象はなかなかきれいに一致しないところでしょう。個人的にはどちらも納得。神戸新聞杯がG1あるいは古馬との対決という条件だったら逆転でもよかったように思っています。あ、トーホウジャッカル少なすぎ、とか思いますけどね。


ほの暗い感想を述べるなら、「ロンジン ワールド ベスト レースホース」で表彰されたレーティング1、2位と、日本の年度表彰では温度感が違いますよね。
ロンジンワールドベストレースホースランキング及びJPNサラブレッドランキング 2014年

一方でホッコータルマエとコパノリッキーの票差はちょっと極端。国内の直接対決で言えば2勝2敗。G1はともに3勝。甲乙つけがたい戦歴ではあると思いますが、ここまでの差を生む、その決め手はどこだったのか。

あ、それら事実が即悪、ということではないですよ。もちろんジェンティルドンナやホッコータルマエが評価に値しないということでもなく、欧米の威光を背にすべきということでもないです。もちろん。


なんとなくなんですが、年度表彰の仕組みにそろそろアップデートがほしいなぁと思っています。毎年、各個人の思惑とは異なる選出があるとファンの間から愚痴のように出るネタではありますけどね。

現行の方法だと、90年代後半以降の地方交流G1や海外主要G1との比較など、比較的新しい戦歴とパフォーマンスをどう年度表彰に折り込むかが不透明なまま、いまに至っているような気がします。凱旋門賞と安田記念、どちらをどう上位に取るのか、JBCクラシックをどれくらい重く捉えるのか。…ベテラン記者さんの判断基準は思い入れもコミでバラバラになってしまっている印象があります。


基準を統一するのが難しければ、ファンも参加できる形にするのもありかもしれません。政治の世界なら衆愚政治という言葉がありますが、年度表彰の投票にはあてはまる話ではないでしょうからね。たくさんの参加者を確保することで特定の判断基準が幅を利かせにくくなる、という効果はあるように思っています。

重複投票や不正行為などの運用上の問題も山積していそうですから、是非活発な意見交換を。その向こうに多少わいがやな年度投票があるならいいですね。



最後に。

年が明けてこちら、有力馬の海外遠征の話が続いています。エピファネイアのドバイワールドカップ、とその向こうにBCクラシックを見据えているのは何とも頼もしいのですが、今年は複数の馬のオーストラリア遠征が発表されました。ワールドエース、トゥザワールド、トーセンスターダムの3頭。いずれも国内では戴冠のない馬、豪州遠征は未知数な部分が多いですがその分楽しみではありますよね。いずれも現地の若手騎手を押さえているそうですし、この手探りが必要なのだと思っているところです。

年度代表馬の意義づけは変えずに、これらの新しいレースへのチャレンジとその結果をどう評価していくのか。ビッグレースの凋落などもありますからね、国外の趨勢にもアンテナを張って上手に仕組みに反映させてほしいと思っています。

…だいぶ欲張りな気がしてきましたw


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2015.01.29


ホッコータルマエ、磐石の横綱相撲でした。

直線追いすがるカゼノコを、接近した分だけ突き放すような脚色。幸のアクションが余裕を物語っていると思います。白鵬はもの言いに物言いをつけましたが(個人的には許容範囲ですけどね)、こちらのダート王者は危ういところのない完勝でした。

若干?な印象ですが、レースラップはこちら。
7.1-11.1-12.7-13.9-12.7-13.6-13.7-12.3-13.2-14.0-12.6

意欲的なサミットストーンの逃げがありました。上手くためながら逃げられたように思いますが、それは同時にタルマエがラクをできる展開でもあります。なにより、タルマエのスタートがばっちりでしたからね。先手争いも待機勢の探り合いもバンと受け止めるポジションのまま最初のコーナーを迎えることができたように見えました。

ラストから2ハロンの14.0は個人的にウソだぁと思っていますが、なかなか緩急のあるラップを上手に乗り切ったようです。単にスローを溜めただけではないでしょうね。

これでG1は8勝目。ヴァーミリアンの名前がそろそろ比較に挙がってきますでしょうか。次走はフェブラリーSをパスしてドバイWCとのこと。今年からダートに戻る馬場も味方するでしょうかね。エピファネイアとの異種格闘技戦も含めて、ドバイミーティングが楽しみになってきました。ぜひ順調に。


気になったのはハッピースプリント。見間違いではないと思いますが、どうもコーナーごとにポジションを下げている、というよりはスピードをのせてのコーナリングが上手くいっていない印象。大井の4コーナーを馬なりで進出する姿からすると、コーナー半径に注文がつくタイプなのかもしれません。

最内枠が好材料になったでしょうか、2番人気だったのはちょっと驚きでした。勝島王冠以降、春先の2冠を制した唸るようなフォームは戻ってきていないように見えていまして。調子と小回り、そして相手関係。嵌るための条件はだんだん辛くなってきたでしょうか。

次走はフェブラリーSとも伝えられていますが、回避との見立てもあり、どうなるかはもう少し見守ることになりそうです。南関東2冠のフェブラリーS参戦、となると自分はトーシンブリザードまで遡っちゃいますけどね。無理をしないチャレンジを希望しています。個人的には、1600mより距離を縮めたときのパフォーマンスが観てみたいと思っています。興味本位ですね、はい。



最後に。

東海Sでコパノリッキーが圧勝。ただしストレスの少ない競馬だったことが、フェブラリーSに向けては絶対の信頼とは言いがたい印象があったりもします。

ゴールドアリュール産駒の府中1600m押し切りは幾度となく観て来ました。…まぁでも開幕週の根岸Sが終わってからじゃないと具体的にイメージしづらいですよね。コパノリッキーかワイドバッハかワンダーアキュートか、という贅沢な選択を迫られるジョッキーもおりますし。

カゼノコがフェブラリーSならなお面白いと思いつつ、府中開幕を楽しみにしているところです。この時期寒いんですけどね。頑張りますよ。

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2015.01.26


クリールカイザー、見事な押し切りでした。

レース後の田辺のコメント、ふるっていました。着拾いではなくどうしたらゴールドシップを負かせるか。勝負にいけるジョッキーの発想ですね。気持ちが据わっている分、不意の捲りにも慌てず対応できたと思っています。しかし、ある程度先行するとは思っていましたが逃げの形に求めるとは。

所用のためオンタイムでは見られず結果はあとでチェックしたのですが、クリールカイザーが勝ったのも、ゴールドシップ、エアソミュール、フェイムゲーム、フラガラッハあたりが負けたのも、ラップを見て納得。ラップ構成の妙が影響していそうです。

そのラップはこちら。
12.6-11.7-13.4-13.2-12.1-11.9-12.1-12.0-11.4-11.2-12.0

1、2コーナーでグッとラップが落ちました。800-1000mを通過するあたりでラインブラッドに捲られ12秒前後でビッと締まったラップに変化。田辺は慌てず、軽く主張してからスッと下げる判断にしています。さすがに13秒台までは落ちていないでしょうが、多少息のはいった追走だったでしょう。そして残り800m過ぎの積極的な仕掛け。3ハロンしっかり脚を使ってのラスト1ハロン12.0は想定の範囲内と見えました。

1、2コーナーでグッと引き付けてからは、直線の坂まで段階的に加速していくラップ構成。この構成は、特にゴールドシップをスポイルするには最も効果的な展開だったでしょう。発表ではクリールカイザーとゴールドシップの上がりは同じ34.4。レース中盤から徐々に加速していくレースラップの中で先行勢を上回る上がりを出すのは、相当な俊敏さと息の長さを兼ね備えていなければいけないでしょうからね。

あくまで個人的な見立てですが、ゴールドシップはレースを投げてはいないと思っています。坂を上がってから前の馬を交わしていますしね。ひるんだとしたらスタートから少し進んだところ、挟まれる格好になった場面でしょう。強いて言えば、直線にはいってなお先行馬の脚色がよいので、交わしきれないなーしんどいなー的なゴールドシップ自身の見積もりがあったかもしれません。勝負どころで本来の反応ではなかったという主旨の岩田のコメントはそのあたりにあるように思っています。レースでなかなか120%を出そうとしない、リスクヘッジのできるタイプ。そう考えるなら故障が少ないのも納得でしょうか。

後出しだと何とでもいえちゃいますが、このあたり、レース前に想定していました。問題は先行してアドバンテージを得てなお上位に食い込める馬がどれか、ということ。案の定考えすぎてミトラが抜けました。。。福島記念を勝ってるんですから、外枠に目をつぶって素直に相手に含めていればねぇ。


エアソミュール、フェイムゲーム、ショウナンラグーン、フラガラッハ。展開の恩恵を受けられなかった馬はなかなか多い模様。ノーカウント、とまでは思っていませんが、次走以降、コース適性や枠順など舞台設定ひとつで平気で巻き返してくる可能性がありそうです。要注意と思っています。

ディサイファは好枠と先行ポジションを利した分、展開に嵌ったという部分が強そう。一方のパッションダンス、ダークシャドウは1コーナーまでに前に入られた分、内枠を活かしきれなかった様子。いずれも着順はそのまま受け取りにくい印象です。


勝った騎手と厩舎は、昨年のヴェルデグリーンと同じ。ファンの側が感じる因縁は当事者とは温度差があるでしょうか。特にコパノリッキー降板とあわせて、田辺の意地という主旨の書き込みもあちこちにちらほら。田辺からコパノ陣営向けにヘンなコメントがでていたら、いろいろ思うところですけどね。活字になったコメントは昨年に引き続きチャンスをもらったことへの感謝。こういう体裁が保てることも大事と思っています。サラブレモバイルの対談はいい意味でひどいですけどねw



一方、中京では東海S。こちらは1コーナーまでを慎重に制したコパノリッキー武豊でした。

ニホンピロアワーズがうまく引っ張ってくれたことで見栄えのする着差になったと思っています。が、1コーナーまでに外から被せられないように視線や手の動きでけん制する武豊。駆け引きの妙は映像を見て取れる、と思います。後続が手を出しにくい展開に持ち込む様。フェブラリーSは磐石、とは言い切れないように感じていますが、もちろんこれで有力候補でしょう。

気になったのは2着グランドシチーにググッとせまったインカンテーション。コパノリッキーもなかなか危なっかしいスタートでしたが、インカンテーションは二の脚がつかなかったのか、1コーナーをかなり離れた最後方で回っていました。あそこから勝負に参加するのは難しいでしょうね。次走はおそらくG1と思われますが、スタートダッシュに結構な懸念が残った、という印象です。



最後に。

ゴールドシップ、これでまた鞍上を変えるとなると次はだーれ?ということになりますよね。レース映像を観ながら、ゴールドシップ田辺というのも面白いなぁと思ってしまいました。ひとのつながり的に実現の可能性はあまり感じていないのですが、無責任ながら1回見てみたいコンビではあります。


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2015.01.21


先日の日曜、公開講座に足を運びました。

関東装蹄師会主催の講座、かぞえて18回目になるそうですが自分は初めての参加。どうやら乗馬をされている方が対象の講座のようでした。確かに、会場も馬事公苑のすぐそばというロケーションですものね。2つのテーマも乗馬愛好者や本格的に取り組む方向けに馬をよく知ってほしい、という狙いで設定されたようでした。
公開馬学講座開催情報 関東装蹄師会 オフィシャルホームページ

…上記ページは次回開催の情報が載る際に更新されてしまいそうな予感がしていまして(過去開催のアーカイブページが見当たらないんですよね)、2つのテーマだけ備忘録的にテキスト転載しておきます。

PARTⅠ ~Dr.シゲの“馬の健康よろず相談室”~
講師:大和高原動物診療所 齋藤 重彰
PARTⅡ ~ホッピング動作と後肢の駆動力 ―筋力というより弾発力―~
講師:日本装削蹄協会 青木 修

開講直前のアナウンスで録音撮影はいいけど無断転用はNG、と注意がありましたので、このブログではそれとなく触れる程度で書いておこうと思います。かなり興味深い内容でした。トータル2時間、あっという間でしたねー。


当初の順番を入れ替える形になり、最初に青木先生の講義から。競馬ブックで連載もされていましたが、バイオメカニクスの見地から馬の歩行と走りをかなり平易に解説いただきました。ホワイトボードで前肢と後肢を図解しながらの説明、やはりテキストで読むよりことの全体像をつかむには効果があるような気がしました。

…ポイントだけ話すのは難しいですねw

競技馬の瞬発的な駆動力は単なる筋力が作り出しているわけではない。


引用に関連して、馬の並歩ではほとんど筋力を使っていないそうです。走行中の筋電図を取ることではっきりしたそうで、このあたりが先生独自の研究、世界初の試みだったとのこと。

では馬はどうやって推進力を生み出しているのか。これを大きく3つのポイントで説明されていたのですが、ここがエッセンスですから詳述は避けておきましょうかw 主に後肢の働きをホッピングに見立てるのがポイントのひとつ、というところまで書いておきますね。

そのホッピングという例え、自分はピンときたのですが、いまどきホッピングで遊んでいない若年層が多いのかな。会場でも10代20代の反応がいまいちでしたね。Wikipediaですとアクロバティックな写真があがっていますが、一般的には上下に弾みながら角度を付けて移動していく、くらいの遊び方ですよね。
ホッピング - Wikipedia

可動域といいますか、馬の動きの特性や限度を知ることで、むやみに「馬をいじくって」不要なストレスをかけないように意識してほしい、というのが締めの言葉。科学的なアプローチと得られた結果を手段とするなら、それをどんな目的に活かすのか、そこに携わる人がしっかり舵取り(判断)をしなければいけないですよね。専門的な知見が馬のいる現場にどう届くのか、そのストーリーが見える有意義な講義でした。

先生が講義中に勧めていた「馬の動き」という本、ご本人の監訳された本なのですが、脚の「振り出し」期と「引き戻し」期、それぞれのタイミングで活動する「前引筋群」「後引筋群」、といった講義ででてきたキーワードを見つけることができます。割と専門的な内容ですので気合と期待のある方は是非。…ほぼステマのようになっていますがw
Amazon.co.jp: メカニズムから理解する馬の動き パフォーマンス向上のためのビジュアルガイド: Gillian Higgins Stephanie Martin, 青木 修: 本


2つめのテーマは診療所の先生の目線から。年間延べ1万頭を扱ったデータから、乗用馬の三大死因を挙げられていました。それが講義要項にもある、疝痛、骨折、蹄葉炎。この3つとも最終的に蹄の状態に影響するという話でした。

詳述は避けますが、1点だけ震撼してしまったのが蹄葉炎のメカニズム。構造がイメージできない方は調べて補っていただきたいところなのですが、蹄の状態が悪化→深屈腱が蹄骨をひっぱる→蹄骨が下がる→蹄葉炎、という説明を受けて認識を新たにいたしました。爪が弱くなってしまったことで、深屈腱の正常な働きがかえって病変を引き起こすということですから、馬である以上当然にして起こりうるわけなんですよね。蹄葉炎の発症率が高いのもうなずけました。

個人的に、蹄葉炎という言葉に初めて目にしたのはアグネスデキシイでした。素質の開花を絶たれたサザンヘイロー産駒。疑問をもって調べても当時の競馬ファンが手にいれられる情報はたかがしれていました。…その頃の感覚がいまの好奇心を支えているのかもしれませんね。そうそう、サンデーサイレンスも蹄葉炎でした。

「No hoof, No horse.」という言葉をフィーチャーして講義は終了しました。蹄なくして馬なし、といえば聞いた事がある方もいらっしゃるでしょうか。先生のアレンジで「Know hoof, Know horse.」という言葉も合わせていただきました。後者のほうが重みがあるでしょうか。



最後に。

土日の競馬は粒度を下げてチェックしていました。事前の予想には時間をとれませんでしたねぇ。印象的だったのは日経新春杯のアドマイヤデウス、の道中の手綱。岩田の長手綱プランプランはおぉ、と思ってしまいました。外のコウエイオトメのテンションの高い手綱とは全然違っていましたね。

青木先生の講義では「首」の重さと動きもポイントになっていまして、ウエスタン乗馬のほうが馬の首の動きを制限しないからブリティッシュとは違って参考になる、という派生した話もありました。さすがにテンガロンハットの岩田を想像してはいませんよw アドマイヤデウスの首にかかる負荷はかなり少なかったのではないかなー、などと早速感化されながら、もういちどレース映像を振り返った次第です。


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2015.01.11


見事なトレヴの連覇でした。

恐れ入りました。好位追走、というと聞こえはいいのですが、3コーナー過ぎからは口を割っている姿。カメラのアングルが象ったイメージでしょうが、道中ずっと先行馬群に埋もれているように見えました。直線に向いて視界がクリアになってからはホントに強かった。

前半スロー、残り1000mはだんだんと加速し続けるレース展開だったと理解しています。それを見越してか、ジャルネはスタートから出していきました。内枠スタートの分も馬場が速いことも加味していたかもしれません。道中は終始インをキープしつつ、他馬に決定的に目の前に入られないようひとつ外をけん制し続ける騎乗があったと見ています。

フォルスストレートの出口で少し膨れる所作。逃げ馬が内ラチから離れたことに追随した格好ですが、後続に響いたでしょうね。フォルスストレートの出口まで縦長で進んだ馬群は、さながらテトリスの棒を回転させるかのように直線入口で露骨に横一直線になりました。後続各馬が加速しながら横のポジションを確保しようとした結果ならそこまで不可思議ではないでしょうか。いずれにせよ先行馬の小さな動きは、水滴が波紋を広げるように後続に余分な遠心力をつける効果を生んだように見えました。


「戦略が必要」。レース後にコメントを残したジャルネ。日本馬が大外へ吹っ飛んでいく可能性も折り込んでいたような気がしています。相変わらずの深読みしすぎ、かもしれませんね。単純に内を突くかどうかという話ではなさそう、というあたりは改めて後述します。

2014年のトレヴ陣営、心身ともに下降するコンディションとの戦いだったようです。無料で読めるかしら、netkeibaの合田さんのコラムが、トレヴを振り返るのに最適と思います。
歴史に残る復活劇を演じた“女王”トレヴ/凱旋門賞回顧 - netkeiba.com


ヘッド師はヴェルメイユ賞前にフランキー降板を申し出たそうです。これを了承したオーナーシップ。連覇直後のジャルネの涙には背負った期待と責任が透けて見えるようです。おそらくはヴェルメイユ賞の結果を度外視する覚悟が整っていたことでしょう。トレヴ復活という目的に関係者が一にまとまっていたのなら。そういった時のプロジェクトチームはしっかり力を発揮するんですよね。細かい事情は察するばかりなので結果が伴ったが故の美談かもしれませんが、少なくともそう見せるだけの準備がなければあのパフォーマンスにはつながっていないでしょうからね。

タグルーダもオーストラリアもルーラーオブザワールドも引退する中、トレヴ陣営は来季も現役続行を発表。あくまで凱旋門賞を目指し、少しでも不安がでればその時点で引退、という主旨のコメントが伝わってきています。オルフェーヴルが現役続行を決めたときに少しだけ似ているなと思いつつ、来秋まで、楽しみに、気長に。3連覇の舞台でその姿を見てみたいと思っています。

RACING VIEWERに特設サイトがあり、バイアスの少ないレース回顧が上がっていますので紹介いたしますね。
JRA × JRAレーシングビュアー 2014凱旋門賞特集 ~第93回 凱旋門賞 レース回顧(合田直弘)
JRA × JRAレーシングビュアー 2014凱旋門賞特集 ~フランス現地リポート(沢田康文)



さて、ここからですね。どうまとめようかいろいろ考えているうちにずいぶん時間が立ってしまいました。年越しちゃいましたからね。放っておくと気づきも考えも期待も憂慮も勝手に堆積していくばかりでして、どこかで文字にして整理したいなぁと、年末年始にようやく少しずつ取り掛かり始めた次第です。

いくつかの切り口で、凱旋門賞からこちら側の景色を自分なりに書き起こしてみます。もちろんピントがずれているかもしれませんので、あくまで個人の見解ということで何卒ご容赦を。新しい気づきや期待が生まれるようなら幸いです。



直線に向いての馬群の展開。

優駿11月号の詳報で見ることができますが、直線横一列の馬群を正面から撮影した写真。もちろん左端にトレヴ、右端にハープスターというレイアウトです。フォルスストレートまでは密集した馬群。直線に向くコーナリングを利して進路を確保しようすると各ジョッキーの手探りが、端的に言えばひとつ前の馬よりひとつ外側、という選択を生んだようにも見えます。相手の馬の国籍を問わず、そう簡単に後ろの馬にいいコース取りをさせない(=内を開けない)でしょうからね。

ただ、こんな邪推もしていまして。スタートからしばらく歩を進めた時点で、先行したジョッキーは日本馬が後方に控えていることを察していたでしょう。彼らからすれば直線入口で内を閉めながら外に展開するのはごく必然の戦略でしょうが、その必然な所作の中に日本馬へのディスアドバンテージを見ていたのではないかなーと。つかず離れず、後ろから割って出られない程度の横幅を保ちながら、差し脚を伸ばすであろう日本馬の進路を消す横長の馬群。特に他の陣営と結託しなくてもそれくらいはできるでしょうからね。

なんといいますか、アウェイの洗礼とも欧州競馬の意地とも受け取れる象徴的な写真だと思っています。



日本馬は密集馬群で勝負ができたのか。

内をつけば。もう少し前で競馬をすれば。馬群の中で進められれば。レース後のたらればは多分に期待感の表れなのでしょうが、こうしたたらればを実現するにはスタートから好位に押し上げる必要があるでしょう。その際立ち向かう必要があるのは、馬場状態ともうひとつ大きく日本と異なる、馬群の密集具合のようです。

日本のジョッキーがタイトな馬群に慣れていない、ということはあると思います。それは現地のトップジョッキーをオーダーすることである程度フォローが効くのではないか、と推測されます。まっすぐ走らせる技術と馬上でブレない強いフィジカル。たとえばムーアの体幹なんて尋常ではない印象ですよ、ホント。自国での競争を勝ち抜いてきて短期免許を取得した外国人ジョッキーなら大概は備わっているスキルでしょう。…んーそうでもないかもしれないかもw

ただ、日本の調教とレースに慣れた馬が、突然他馬とものすごく接近する圧迫感に対処しながらレースができるのか、改めて考えさせられます。前後の馬に脚を踏まれる寸前まで、左右の馬にさながらサッカーのチャージを受ける寸前まで接近されながら、日本のレースと同じように軽いグリップと伸びやかなストライドで、これまでのパフォーマンスをだせるのか。…こう書くとハードル高そうですよね。

まして待機策から切れ味で勝負してきたジャスタウェイとハープスター、そして気分よく走って始めて力を発揮する状態にある(と思われる)ゴールドシップ。いずれも馬群の中に突っ込んで、フィジカルを誇示しながらポジションをキープできるタイプではなく。。。

たとえばハープスター陣営については札幌記念で、これまでより前で進めてもよいと川田に伝えていたようです。事前にこれまでと異なる競馬を試す思惑はあったのですね。ただ、トウケイヘイローが団子のスローペースを作り出す可能性は低いでしょう。スタート後の川田の所作からはこれまでの経験を壊さない範囲で、という思惑が見えるようです。凱旋門賞までの騎乗依頼が札幌記念前に確約されていたら川田の試し方も変わっていたのではないか、というのは武豊TVでの指摘ですが、これまで通りの待機策になったのはそれだけではないのでしょう。結果、馬群を縫う競馬は凱旋門賞でも出来ませんでしたね。



自分の競馬をすれば。

まったく同じ表現ではないにしろ、3陣営がほぼ同様の趣旨のコメントを残していると認識しています。戦前に懸念していたのですが、これが後方待機策や馬の気持ちを優先する対策を指すなら、それはジャルネの指摘のほうがより妥当でしょう。仮柵の取れたロンシャンには戦略が要る。終いを活かすマツパク流では2014凱旋門賞には不向きだった、というオチでよいのかはちょっと疑問をもっていますけどね。すごい邪推ですが、阪神JF時の外回せという指摘が一人歩きして以後、引っ込みがつかなくなったしまったのかもなぁと思うところもあります。



既視感というより類似したレース。

レース当日や翌日リプレイを見ながら思い出したのは、京都大賞典のローズキングダムでした。へ?ってなった方、JRAのHPで映像を観ることができますのでぜひチェックを。少頭数と極端なスローではないあたりが異なりますが、開幕週の良馬場を好位の内から抜け出す展開。差し損ね気味の後続をしっかり押さえたあたり、切れと持続力を兼備していたといえるでしょうか。
11R 京都大賞典|2011年10月9日(日)5回京都2日|JBISサーチ(JBIS-Search)

開幕週の京都とあまり変わらないとすれば、後方待機した日本馬はある意味必然の負けであったでしょうし、翻せば、京都とロンシャンで似た戦略が奏効する?ロンシャンを凱旋門を、過剰に見上げる必要はあまりないのかもしれません。



横山典弘の「甘くない」。

インタビュー映像の中で何度か登場する言葉ですが、その言葉の絞り出し方から、個人的な印象ですけどね、ゴールドシップの惨敗を予期していたんだろうなと思いました。2014年の京都記念でデスペラードを逃がすジョッキーですからねぇ。スローで後方待機せざるを得なくなったら。そのデメリットは見えていたでしょう。それに抗えない資質の馬で挑まなければならない巡り合せの妙を、観る側からすれば恨めしく思うしかありません。

もっとも戦略的に動きにくい馬の背に、戦略的に立ち回ることができるジョッキーが跨っているのは何とも皮肉です。ジャスタウェイ横山だったら、どうなっていたでしょうね。



「本気で凱旋門賞に勝ちたいなら」という議論。

レース後、様々に感想なり分析なりを目にして来ましたが、議論の精度とは別に気になったのはのこの言い回しでした。この表現の主語は誰になるのでしょう。プロの書き手のうち、このビッグイベントに向けた一体感に水を差さないために、あえてそういう書き方にしている方もいるのかもしれません。でも大概はこのふわっとした枕詞で回顧記事をものしているケースにまま出会っておりまして。

「本気」の程度なんて誰もわかりませんし、大枚はたいて行くんですからそりゃ気持ちははいっているでしょう。安易な精神論に帰着しているならほぼ愚痴という扱いでよいかなと思ってもいます。いや、愚痴も大事なんですよ。懸念しているのは愚痴とも反省ともつかない切り口の議論が蔓延して、凱旋門賞挑戦の価値観に水を差す可能性でして。

必要なのは現場の、それもリーダーシップを取る人間の、地道で詳細な反省とフィードバックだと思っています。人馬の日常の過ごし方から飼料から馬体の洗い方から。航空便の手配や調教馬場の使用手続きなどマネジメントの部分も重要ですよね。細かいファクターを丹念に検証することが有意義なノウハウ蓄積につながるでしょう。こうした反省は当事者がやるしかないと思っていますし、是非お願いしたいところです。

その意味では海外遠征に限らず、角居師がノウハウ共有の勉強会的な集まりを始めているとの報道に触れていまして、すばらしい前進ではないかなと思っているところです。



事前の期待の高さ。

ひょっとすると「本気で~」と発言している人は、事前の期待と結果の落差に気持ちの行き場を見失っちゃったのかな、と推察し始めています。最大のチャンス!みたいな煽り方だとライトユーザーは本当にそうか?と疑う材料がないでしょうからね。凱旋門賞という大きなイベントですから、マスコミ側も煽ってなんぼという側面はあるのでしょう。ただ、過剰に煽った場合、必要以上にがっかりする空気も蔓延しそうですからね。どのくらい期待がかけられるのか、ヘンに煽られずに冷静に批評する態度が主にファンの中から失われないように願っているところです。



JRAの姿勢。

広く日本競馬の価値をアピールするという姿勢があるならですが、廃止された海外遠征時の助成金を多少条件を変えてでも復活できないものか、という点は書いておきたいと思います。実際に支給されることで財務的な助けになるでしょうし、金銭面と並行してJRAがどういった価値観に重きを置くかが表れる場面とも思っていますでしょう。海外遠征行きたければどうそ、という我関せず的な態度は業界全体にとってきっと建設的ではない、と受け取ってほしい。輸送費の一部補助だけでも全然役に立つと思うんですけどね。

なぜ香港やオーストラリアへの遠征が続くのか、そのトレンドをしっかり分析するなら、あるいはまだ見えていない助成の必要性が見えやすくなるのでは、と思っています。



参考にした雑誌、サイトを紹介しておきます。

雑誌は以下のとおり。
優駿 2014年11月号
競馬ブック 10月18、19日号
Gallop年鑑2014

上記紹介以外のサイトはこちら。
トレヴ | 2014 フランス 凱旋門賞 現地取材レポート | 日本馬の世界挑戦!現地レポート | お楽しみ | JBISインターネット情報サービスJBISインターネット情報サービス

凱旋門賞、フランスのトレヴが連覇。6着が最高の日本勢、完敗の内実。(1/3) [沸騰! 日本サラブ列島] - Number Web - ナンバー

悔いと杭 | 松田幸春の辛口競馬ジャッジ | 競馬ラボ



最後に。

少なくともオルフェーヴルの2度の2着で、適性を見極めたうえであれば、日本馬のトップレベルが主要国のG1を獲れるだけの状況にはきているのでしょうね。その見立てがあるぶん、もはや凱旋門賞にこだわった遠征はその役割を終えているように思い始めています。いや、行かなくていいとか勝たなくていいとは思いませんけどね。

思うのは現場のリーダーに強い思い入れと十分な経験、そしてリスクに対する備えが十分あるかどうかが、遠征の成否を左右する可能性。池絵師、二ノ宮師、角居師などの周到さは、様々な媒体で確認できますのでそちらに譲りましょうか。前向きな手探りはぜひ続けていただきたいと思う次第です。

今年もロンシャンに挑戦する陣営がでてくることを楽しみに、まずはドバイ登録馬から追いかけていくことになりそうですね。エピファネイア、ワンアンドオンリーが直行するらしいですし、京都記念ではキズナとハープスターがぶつかるようですし。わくわくしますねー。


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2015.01.06


レーザーバレットの差し切りでした。

ハイペースでの前残りを狙ったでしょうか、スタートダッシュでナンチンノン、サクラインザスカイ、スリーボストン、メイショウノーベルが押し出して来ました。それを大外から被せるようにブルーストーン。途中でナンチンノンが引いたあたり、中途半端にしなかった吉田隼人の判断と反応が光りました。

レースラップはこちら。
11.9-10.6-11.3-11.8-12.1-12.7

ブルーストーンの逃げっぷりを先ほど映像で確認しましたが、いやこの馬は京都だろう、などとピンとこない突っ込みを画面に向かってする始末。前走は人気薄で京都を勝ってますもんね。そのスピードは十二分に確認できましたが、あれだけ突っ込んだ分、中山の坂は堪えましたね。次走以降、面白いかなと思っています。

4コーナーにかけて雁行する先行馬をひとつ後ろから、内にいれずに眺めていたのがレーザーバレット。一番手応えのよいメイショウノーベルの外に展開するのは外から見れば妥当ですが、初めから内に入れない判断にしておかないとスムーズにはいかなかったでしょう。手応えのない馬の後ろに入らないヘッドワークは、当たり前といえばそうですが、改めてなるほど感がございました。

あのハイペースを好位追走して押し切れる馬場、ということでしょうか。未勝利の1800mでは上がりが39秒や40秒。まるで大井のようなかかり方をしていました。会社の昼休みにそれを確認して、逃げ切りも後方一気もないかなーとイメージ。…ここまでは合っていたでしょうか。

メイショウノーベルが粘った分、馬券は外れ。マルカバッケンを切ってタイセイファントムを追加するじたばたっぷりでした。いや、狙っていたミヤジエルビスには少しパワーが要るかなと思って馬連BOXに切り替えたんですけどね。失礼いたしました。やっぱり会社休めばよかった?いやいやw



…ところでですね、えー、金杯は?という声が聞こえて来そうですが、実はほとんど予想ができませんで。中山、京都ともに馬場のよさを上手く味方につけた内枠ないし先行馬がしっかり力をだしましたしね。個人的に語ることが少な目のため、今回はあまり取り上げず、という形になりました。決してウインフルブルームを買い損ねてくやしいとか、そういう器量のちゃいちーな理由からではございませんよw

ただ、中山金杯のラブリーデイにはちょっとびっくりしましたね。あの走破タイムは予想していませんでした。馬場の排水性をアップさせる改修工事が終わってから初めての開催。12月からの馬場状態の良さは、来週以降も留意しなければいけませんね。ちなみに有馬記念は、各陣営が馬場のよさを活かして末脚を引き出す方向に勝負のポイントを寄せた結果と思っています。スローの上がり勝負は読めていましたけどねぇ。



最後に。

凱旋門賞について書くよと宣言しつつ、このていたらくぶりでございます。手元で徐々にまとめておりますので、…お待ちいただいているのかしら?もう暫くお時間いただければと思います。宣言どおり日記を書く、とはヘンといえばヘンなんですけどね。年が明けて、ドバイなり豪州なりの遠征に関する話も聞こえて来ましたので、そのあたりまで絡みそうな…。自分なりにすっきりしたいのもありますのでね、もう少し頑張ってみます。

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