2012.07.16

馬事文化講座で講師をされた方へ質問した話を踏まえて、エクイターフについての個人的心象と考察を少々書いておきたいと思います。講師ご本人に許可を取っているわけではありませんので(とはいえ内緒の話でもないですが)ある程度は配慮しながらですが、あくまで自分が聞き取った限りの内容とその解釈という前提で進めたいと思います。なお、聞く限りは、エクイターフの品種登録時に直接関わる立場にいらっしゃったとのことでした。


エクイターフの特長。

改めて質問してみたのですが、あちこちで既出の通り、ほふく茎が太くクッション性に富んでいることが挙がりました。全国の芝を集めて選抜した結果、五島列島に生息していた品種が残った、というのも既出ですね。テキストで読むなら、競走馬総合研究所の不定期コラムがよいと思います。
研究人コーナー 「エクイターフ」に夢のせて

ちなみに野芝と洋芝の説明については、治郎丸さんのコラムがわかりやすく感じましたので紹介いたします。
“野芝”か“洋芝”か、それが問題だ(前編)

あ、ちょっとだけ脱線して。ROUNDERSの感想の件、ブログでご紹介いただきました。恐縮です。有難うございました >治郎丸さん


時間の経過。

全国の芝の選抜から始まり、現在までにおよそ30年経過しているそうです。ジャパンカップが今年で32回目。計画通りかは不明ですが、相当長期間にわたる研究ですね。DI産駒向けのスピード馬場にチューニングしてる的陰謀説を最近になって目にしましたが、どうやら違いそうですw


馬場が壊れる。

話を聞く中で印象的だったのは、馬がキックした際に馬場が「壊れる」必要があるという表現でした。それは、芝が剥がれることであり、土が掘れることであり、ほふく茎がクッション性の限界を超えて壊れ、馬場が凸凹になることでもあると理解しました。違うかな。その後の問答も含めるとそのような理解でよいと思っています。洋芝のレースだと顕著ですよね。開催後半だと蹴り上げられる芝と土の塊が明らかに大きいですから。一方の野芝も比較的根が丈夫とはいえ無限の耐久性ではないですので、A、B、Cコースと幅員を変えながら開催するのも改めて納得感がありました。


脚元を守るジレンマ。

続いて、できあがった凸凹で脚をひねるリスクについて質問してみました。いわゆるミスステップについて、どの程度懸念されているのか、という質問ですね。この点、こちらの思う以上にセンシティブに受け止められている印象でした。馬場が掘れる瞬間はスピードダウンはあるものの相対的に脚元への負荷は下がります。馬場が衝撃を吸収してくれるためですね。ただ結果として凸凹になった馬場が残り、それが次のレースでは脚を取られるリスク要因になってしまいます。スピードが減少しすぎることも、クッションがなさ過ぎることも、馬場を壊しすぎることも、それぞれに一長一短。そのジレンマを少しでも緩和するために、クッション性が高く、根が太い(=耐久性が比較的高い)野芝が研究対象になった、というのが実態のようです。

このあたりは、極力壊れないことが理想でありつつ適切に壊れていくべき、というニュアンスを汲み取りながらの会話でしたね。


エクイターフの輸出。

どうやら無理そうですw お聞きした限り、国際化に向けて権利を保全するための品種登録だったようですが、ニーズが少ないのは如何ともしようがないようです。欧州圏の芝コースは日本ほど短期間で繰り返し使用しないですし、香港は温暖で雨が少なく100%洋芝で十分間に合っているそうですし。やはり「多雨」「多湿」「負荷の頻度」など、日本特有の条件に適しているという、良し悪しはともかくガラパゴスな特長をもった芝である、というのが現状の評価として妥当であるようです。



現時点での私的見解。

競走馬の脚元も守ることと馬場保全の観点からエクイターフは導入されているようです。というよりそれ以外の要素は、芝の品種研究の現場ではそこまで考慮されてない印象を持ちました。もちろん多数の関係者のうちの1名からお話を聞いただけですし、あちこちウラを取った確実な話でもないですので、そこはしっかり踏まえたうえで。馬場と興行戦略が密接に結びついていないという以前からの個人的な先入観を重ねた上での私的見解です。そこから、先行有利や高速化は導入の副産物なのだろうという見解にも至りました。是非は別にして、あくまで凸凹が少なくミスステップを起こしにくい馬場を導入した、という前進があったのでしょうね。

そして、脚元への配慮の対策のひとつと考えるのが妥当、とも思っています。例えば、レース中のミスステップが減少することとレースのダメージによる故障の比率が減少することは、おそらく別物だろうと推察できますし。ただ、レースの疲労に伴うトレセンでの故障などは因果関係を裏付ける統計を取りにくいでしょう。クッション性のある「壊れない」馬場を「叩く」ように走ることの影響は今後のローテーションの判断やケアの方法に大きく影響してくるという印象です。なお、講師の方とは万能の馬場はないねーというやり取りで話を終えました。

一応、前回の記事はこちら。
エクイターフ考察

最近見つけた福島馬主協会のコラムも参考になりました。ポリトラックの紹介記事なのですが、馬場によるグリップの差やミスステップについても触れられています。あわせて参考ください。
ポリトラックと競走馬の健康について



最後に。

エクイターフの特長を自分なりに理解しようと努めてきましたし、今後もその見極めは必要になると個人的には思っています。が、予想のアプローチや馬券の的中に即直結するとは考えにくいかな、とも思うようになりました。様々な予想メソッドの組み立て方や指数の補正などに影響が及ぶ可能性を感じてはいますが、当たるときは当たるし、当たらないときは当たらないというのは変わらないかなとw 雑な見解でしょうかねw

例えば、岩田と福永のレースの組み立て方の違いも、エクイターフがどう担保してくれるか、どちらに味方するか、かえって見ものですしね。そしてそのエクイターフも単なる高速馬場ではなく、生育の時期、根の張り方、開催中の天候などで状態が変化していますし。もちろん馬の特長も相変わらず様々ですからね。

勝因が様々なファクターの強弱によって一定の不確実性で揺れているのが、健全な挑みがいを生み出してくれると信じています。特定の要因が即勝因だってわかっちゃうレースだけになってしまったら、予想のし甲斐はなくなってしまうでしょうから。エクイターフも予想する際のone of themに落ち着きそうで、ちょっと安心していたりします。

でも、その評価がガラパゴス化へ向かってしまう可能性は全く別問題でしょう。例えば、エクイターフとアスコットやロンシャンがつながっていると証明することは日本競馬の認知と存続の形に結構な影響力をもっているのではないかな、と推察しております。今後の海外遠征やサンデーの血統評価などと並行しつつ、興味深く見守っていこうと思っています。


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