2013.04.11


自分は1996年から競馬を始めていますが、ダービー以前はいわゆる覚醒する手前。ちょこちょこレースを観てはいましたがこの伝説のマッチレースはリアルタイムでは確認していません。その価値もよくわからないピヨピヨッとしたライトユーザーでした。はっきりレース映像を確認したのは井崎先生のNumberビデオだったと思います。ギリギリでリアルタイムに間に合っていない分、その後の反芻に時間を費やしてしまったのかもしれませんね。ブライアンズタイムの想い出語りも兼ねて。いまいま感じているポイント、ほぼ妄想かもですが、書いておこうと思います。


…前置きはどれくらい書きましょうかw
いいからググれでもいいのですが、2頭の主役に簡単に触れるところから。

かたや、ナリタブライアン。1994年の年度代表馬にして史上5頭目の3冠馬。95年シーズンは春先に右股関節炎を発症し、その影響から秋の成績を落としてしまいました。このあたりは横綱というの価値観がオーバーラップするのですが(自分はすばらしい価値と思っていますよ)、チャンピオンとしてのパフォーマンスが十分できなくなっていることで引退の二文字がちらつき始めていたようです。痛みがでるかもしれないというブライアン自身の加減も以前のパフォーマンスが見られない原因と見られていました。心身ともにかつての姿を取り戻せるのか。復活か引退か、チャンピオンの矜持を懸けた96年の緒戦がこの阪神大賞典でした。

こなた、マヤノトップガン。1995年の年度代表馬。ナリタブライアン低迷の間にG1を2勝、特に有馬記念はブライアン以下古馬を完封しての勝利でした。それでも全盛期のナリタブライアンに比べれば…、という声。暫定チャンピオンのごとく評価される状況を打破するために。96年シーズン緒戦はチャンピオンとして、最良のブライアンズタイム産駒として評価を得るために重要な一戦でもありました。

…こんな感じでよいでしょうかw 若干書いてて恐縮してきましたがw

で、この2頭が天皇賞の前哨戦で次元の違うパフォーマンスを魅せることになるわけです。
競馬 阪神大賞典 ナリタブライアン vs マヤノトップガン - 高画質 -


レースラップはこう。
13.7-12.3-12.0-12.2-12.8-12.4-12.7-13.5-13.0-12.5-12.0-11.3-11.3-11.0-12.2

残り1000mを切ってからのラップが尋常ではありませんね。エクイターフ以前ですよ、念のため。あーもう、展開の説明は割愛w 映像で堪能してください。ないしは脳内で再生してくださいw



最近、改めて観なおして気づいたこと。

まず、2頭抜け出してから4コーナーまで、いやラストまでですね、きれいに真っ直ぐ走っていること。これは2頭のチューニングが十分な状態にあることと、2人の鞍上が実に巧みであることを示していると思います。特に4コーナーの加速しながらのコーナリングは美しい!曲線がステキ!そりゃあノーザンポラリス的場Jが空気を読んで軽く手綱を引いたようにも見えますw


もうひとつ、気づいたこと。

ナリタブライアンは直線に向いてから右手前のまま、手前を変えていません。残り200mからの鞍上の鞭は左から2回、右から1回。そのあと左の手綱を引き直したタイミングで左手前にスイッチ。残り100mを切っていました。ここから追い上げてゴール前アタマ差差し切ります。

上記は映像で見て取れる事実ですが、はいここからが自分の妄想。

右回りの場合コーナーでは右手前、つまり推進力になる脚は対角線上の左後脚になります。直線にはいると片方の後脚ばかりで推進するには疲労が増してきますので逆手前にスイッチするのが普通です。マヤノトップガンは直線に向いた直後にスムーズに左手前にスイッチしています。

一方のナリタブライアンは右の股関節を負傷していました。痛みの記憶から加減した走りになっているというコメントも関係者から聞こえていた、ということは右回りのラストスパートは左手前、つまり痛めていた右後脚でスパートしなければいけなかったわけです。

さらにマヤノトップガンの鞍上は早めのスパートから持久力勝負に持ち込む戦法を取りました。これはブライアンの調子を計り、トップガンの力量を改めて確認する良質なトライアルライディングであったと推察します。そしてこの田原Jの仕掛けに武豊Jは間髪入れずに反応しました。

つまりナリタブライアンはロングスパートでスピードとスタミナを問われたうえで、最後に痛めていた右後脚のエンジンを十分に点火させることができるか、という高いハードルを鞍上から課されたわけです。

もはや熱血スポーツ漫画ですよ。残り200m、手前が替わっていない(痛めた脚を使おうとしない)ブライアンに対し、右側に重心を移し左から少し大仰なアクションで鞭をいれる豊J。その所作に手前をスイッチさせたい意図が見て取れます。そして替わらない手前。左からもう1回、まだ替わらない。持ち替えて右鞭、まだ替わらない。残り100m。チャンピオンの復活はならないのか。あのケガは克服できないのか。もうこのあたりは鞭を振るいながら「替わってくれ、替わってくれ、替われぇー!!!」みたいな熱血主人公(=鞍上)の声が聞こえるところですよw え、豊Jはそんなタイプじゃないってw

そして左の手綱を引き直した瞬間、左手前へのスイッチ。「左!!」で踏み込むのは「るろうに剣心」でいえば奥義が発動するところでしょうw ブライアンが右脚で加速することを決めた瞬間。この瞬間の胸アツ感、たまりませんね。

そしてアタマ差交わし切ったあとのガッツポーズ。これはチャンピオン復活という結果と同時に「右(脚のエンジン)が使えたじゃないか」というプロフェッショナルな安堵感でもあったのかなと。



…ヒートアップし過ぎましたかw

一応冷静に回収しておきます。真実はわかりません。上手く記号がつながっただけの勝手なストーリーテリングかもしれません。とっくにブライアンの中で痛みへの躊躇はなくなっていたかもしれませんし。一方で名馬のウィークポイントの詳細ってよっぽどじゃないと関係者は語らないと思っていますし(戦略上の秘匿事項ですし繁殖馬としての評価にも影響するかもですしね)。でもこうした文脈で観ると、復活を期する姿はより引き立って見えると思います。ええファンはいつだって身勝手ですから。ちゃんと心得たうえで面白がりたいと思っております。



個人的な見立てでいえばナリタブライアンは、故障によって骨格と筋肉のバランスが崩れ、ついに全盛期のフォームを取り戻せないまま引退を迎えていたのではないかな、と思っています。そして悲しいかな、物議を醸した高松宮杯の直線の伸びは、96年の3戦で一番躍動していたように自分には映っていまして。取り戻しかけていたのかな、というのも身勝手な見立てです。

あーマヤノトップガンにスポットを当てて回顧しておきたくなってもいます。デビューからしばらくはダート短距離を使っていたこととか。道中トップガンの背中に逆三角形のシルエットで収まる鞍上と、黄色い長手綱。かっこよかったなー。なつかしくレースを観返しておりました。



最後に。このレースの評価について。

詳しくはWikipediaがよいでしょうか。…先の2頭の紹介もWikipedia参照でよかったかもですねw まぁ勢いそのままにしておきます。
第44回阪神大賞典 - Wikipedia

ナリタブライアンのパフォーマンスが全盛期のそれでないのは同感です。また、G1の前哨戦としてどちらもトライアルを前提にした仕上げと展開であることも同感。つまりベストパフォーマンスでないという観点から評価を上げないという見解はひとつの見識と思っています。

ただ、これらを前提として踏まえてなお、年度代表馬それぞれの矜持が試される、まして引退の際に追い込まれたチャンピオンの復活劇。フィジカルの極みを競うのももちろん名勝負でありますが、観る側の文脈をしっかり巻き込んだ美しい力の試し合い、これもまた名勝負と呼んでよいのではないかと思っています。



…あまりブライアンズタイムの追悼には見えないかな。いやー、これだけ語るためにはお父さんの存在は欠かせないわけですからね。感謝の意も込めて改めて振り返ってみた次第です。


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