2015.01.11


見事なトレヴの連覇でした。

恐れ入りました。好位追走、というと聞こえはいいのですが、3コーナー過ぎからは口を割っている姿。カメラのアングルが象ったイメージでしょうが、道中ずっと先行馬群に埋もれているように見えました。直線に向いて視界がクリアになってからはホントに強かった。

前半スロー、残り1000mはだんだんと加速し続けるレース展開だったと理解しています。それを見越してか、ジャルネはスタートから出していきました。内枠スタートの分も馬場が速いことも加味していたかもしれません。道中は終始インをキープしつつ、他馬に決定的に目の前に入られないようひとつ外をけん制し続ける騎乗があったと見ています。

フォルスストレートの出口で少し膨れる所作。逃げ馬が内ラチから離れたことに追随した格好ですが、後続に響いたでしょうね。フォルスストレートの出口まで縦長で進んだ馬群は、さながらテトリスの棒を回転させるかのように直線入口で露骨に横一直線になりました。後続各馬が加速しながら横のポジションを確保しようとした結果ならそこまで不可思議ではないでしょうか。いずれにせよ先行馬の小さな動きは、水滴が波紋を広げるように後続に余分な遠心力をつける効果を生んだように見えました。


「戦略が必要」。レース後にコメントを残したジャルネ。日本馬が大外へ吹っ飛んでいく可能性も折り込んでいたような気がしています。相変わらずの深読みしすぎ、かもしれませんね。単純に内を突くかどうかという話ではなさそう、というあたりは改めて後述します。

2014年のトレヴ陣営、心身ともに下降するコンディションとの戦いだったようです。無料で読めるかしら、netkeibaの合田さんのコラムが、トレヴを振り返るのに最適と思います。
歴史に残る復活劇を演じた“女王”トレヴ/凱旋門賞回顧 - netkeiba.com


ヘッド師はヴェルメイユ賞前にフランキー降板を申し出たそうです。これを了承したオーナーシップ。連覇直後のジャルネの涙には背負った期待と責任が透けて見えるようです。おそらくはヴェルメイユ賞の結果を度外視する覚悟が整っていたことでしょう。トレヴ復活という目的に関係者が一にまとまっていたのなら。そういった時のプロジェクトチームはしっかり力を発揮するんですよね。細かい事情は察するばかりなので結果が伴ったが故の美談かもしれませんが、少なくともそう見せるだけの準備がなければあのパフォーマンスにはつながっていないでしょうからね。

タグルーダもオーストラリアもルーラーオブザワールドも引退する中、トレヴ陣営は来季も現役続行を発表。あくまで凱旋門賞を目指し、少しでも不安がでればその時点で引退、という主旨のコメントが伝わってきています。オルフェーヴルが現役続行を決めたときに少しだけ似ているなと思いつつ、来秋まで、楽しみに、気長に。3連覇の舞台でその姿を見てみたいと思っています。

RACING VIEWERに特設サイトがあり、バイアスの少ないレース回顧が上がっていますので紹介いたしますね。
JRA × JRAレーシングビュアー 2014凱旋門賞特集 ~第93回 凱旋門賞 レース回顧(合田直弘)
JRA × JRAレーシングビュアー 2014凱旋門賞特集 ~フランス現地リポート(沢田康文)



さて、ここからですね。どうまとめようかいろいろ考えているうちにずいぶん時間が立ってしまいました。年越しちゃいましたからね。放っておくと気づきも考えも期待も憂慮も勝手に堆積していくばかりでして、どこかで文字にして整理したいなぁと、年末年始にようやく少しずつ取り掛かり始めた次第です。

いくつかの切り口で、凱旋門賞からこちら側の景色を自分なりに書き起こしてみます。もちろんピントがずれているかもしれませんので、あくまで個人の見解ということで何卒ご容赦を。新しい気づきや期待が生まれるようなら幸いです。



直線に向いての馬群の展開。

優駿11月号の詳報で見ることができますが、直線横一列の馬群を正面から撮影した写真。もちろん左端にトレヴ、右端にハープスターというレイアウトです。フォルスストレートまでは密集した馬群。直線に向くコーナリングを利して進路を確保しようすると各ジョッキーの手探りが、端的に言えばひとつ前の馬よりひとつ外側、という選択を生んだようにも見えます。相手の馬の国籍を問わず、そう簡単に後ろの馬にいいコース取りをさせない(=内を開けない)でしょうからね。

ただ、こんな邪推もしていまして。スタートからしばらく歩を進めた時点で、先行したジョッキーは日本馬が後方に控えていることを察していたでしょう。彼らからすれば直線入口で内を閉めながら外に展開するのはごく必然の戦略でしょうが、その必然な所作の中に日本馬へのディスアドバンテージを見ていたのではないかなーと。つかず離れず、後ろから割って出られない程度の横幅を保ちながら、差し脚を伸ばすであろう日本馬の進路を消す横長の馬群。特に他の陣営と結託しなくてもそれくらいはできるでしょうからね。

なんといいますか、アウェイの洗礼とも欧州競馬の意地とも受け取れる象徴的な写真だと思っています。



日本馬は密集馬群で勝負ができたのか。

内をつけば。もう少し前で競馬をすれば。馬群の中で進められれば。レース後のたらればは多分に期待感の表れなのでしょうが、こうしたたらればを実現するにはスタートから好位に押し上げる必要があるでしょう。その際立ち向かう必要があるのは、馬場状態ともうひとつ大きく日本と異なる、馬群の密集具合のようです。

日本のジョッキーがタイトな馬群に慣れていない、ということはあると思います。それは現地のトップジョッキーをオーダーすることである程度フォローが効くのではないか、と推測されます。まっすぐ走らせる技術と馬上でブレない強いフィジカル。たとえばムーアの体幹なんて尋常ではない印象ですよ、ホント。自国での競争を勝ち抜いてきて短期免許を取得した外国人ジョッキーなら大概は備わっているスキルでしょう。…んーそうでもないかもしれないかもw

ただ、日本の調教とレースに慣れた馬が、突然他馬とものすごく接近する圧迫感に対処しながらレースができるのか、改めて考えさせられます。前後の馬に脚を踏まれる寸前まで、左右の馬にさながらサッカーのチャージを受ける寸前まで接近されながら、日本のレースと同じように軽いグリップと伸びやかなストライドで、これまでのパフォーマンスをだせるのか。…こう書くとハードル高そうですよね。

まして待機策から切れ味で勝負してきたジャスタウェイとハープスター、そして気分よく走って始めて力を発揮する状態にある(と思われる)ゴールドシップ。いずれも馬群の中に突っ込んで、フィジカルを誇示しながらポジションをキープできるタイプではなく。。。

たとえばハープスター陣営については札幌記念で、これまでより前で進めてもよいと川田に伝えていたようです。事前にこれまでと異なる競馬を試す思惑はあったのですね。ただ、トウケイヘイローが団子のスローペースを作り出す可能性は低いでしょう。スタート後の川田の所作からはこれまでの経験を壊さない範囲で、という思惑が見えるようです。凱旋門賞までの騎乗依頼が札幌記念前に確約されていたら川田の試し方も変わっていたのではないか、というのは武豊TVでの指摘ですが、これまで通りの待機策になったのはそれだけではないのでしょう。結果、馬群を縫う競馬は凱旋門賞でも出来ませんでしたね。



自分の競馬をすれば。

まったく同じ表現ではないにしろ、3陣営がほぼ同様の趣旨のコメントを残していると認識しています。戦前に懸念していたのですが、これが後方待機策や馬の気持ちを優先する対策を指すなら、それはジャルネの指摘のほうがより妥当でしょう。仮柵の取れたロンシャンには戦略が要る。終いを活かすマツパク流では2014凱旋門賞には不向きだった、というオチでよいのかはちょっと疑問をもっていますけどね。すごい邪推ですが、阪神JF時の外回せという指摘が一人歩きして以後、引っ込みがつかなくなったしまったのかもなぁと思うところもあります。



既視感というより類似したレース。

レース当日や翌日リプレイを見ながら思い出したのは、京都大賞典のローズキングダムでした。へ?ってなった方、JRAのHPで映像を観ることができますのでぜひチェックを。少頭数と極端なスローではないあたりが異なりますが、開幕週の良馬場を好位の内から抜け出す展開。差し損ね気味の後続をしっかり押さえたあたり、切れと持続力を兼備していたといえるでしょうか。
11R 京都大賞典|2011年10月9日(日)5回京都2日|JBISサーチ(JBIS-Search)

開幕週の京都とあまり変わらないとすれば、後方待機した日本馬はある意味必然の負けであったでしょうし、翻せば、京都とロンシャンで似た戦略が奏効する?ロンシャンを凱旋門を、過剰に見上げる必要はあまりないのかもしれません。



横山典弘の「甘くない」。

インタビュー映像の中で何度か登場する言葉ですが、その言葉の絞り出し方から、個人的な印象ですけどね、ゴールドシップの惨敗を予期していたんだろうなと思いました。2014年の京都記念でデスペラードを逃がすジョッキーですからねぇ。スローで後方待機せざるを得なくなったら。そのデメリットは見えていたでしょう。それに抗えない資質の馬で挑まなければならない巡り合せの妙を、観る側からすれば恨めしく思うしかありません。

もっとも戦略的に動きにくい馬の背に、戦略的に立ち回ることができるジョッキーが跨っているのは何とも皮肉です。ジャスタウェイ横山だったら、どうなっていたでしょうね。



「本気で凱旋門賞に勝ちたいなら」という議論。

レース後、様々に感想なり分析なりを目にして来ましたが、議論の精度とは別に気になったのはのこの言い回しでした。この表現の主語は誰になるのでしょう。プロの書き手のうち、このビッグイベントに向けた一体感に水を差さないために、あえてそういう書き方にしている方もいるのかもしれません。でも大概はこのふわっとした枕詞で回顧記事をものしているケースにまま出会っておりまして。

「本気」の程度なんて誰もわかりませんし、大枚はたいて行くんですからそりゃ気持ちははいっているでしょう。安易な精神論に帰着しているならほぼ愚痴という扱いでよいかなと思ってもいます。いや、愚痴も大事なんですよ。懸念しているのは愚痴とも反省ともつかない切り口の議論が蔓延して、凱旋門賞挑戦の価値観に水を差す可能性でして。

必要なのは現場の、それもリーダーシップを取る人間の、地道で詳細な反省とフィードバックだと思っています。人馬の日常の過ごし方から飼料から馬体の洗い方から。航空便の手配や調教馬場の使用手続きなどマネジメントの部分も重要ですよね。細かいファクターを丹念に検証することが有意義なノウハウ蓄積につながるでしょう。こうした反省は当事者がやるしかないと思っていますし、是非お願いしたいところです。

その意味では海外遠征に限らず、角居師がノウハウ共有の勉強会的な集まりを始めているとの報道に触れていまして、すばらしい前進ではないかなと思っているところです。



事前の期待の高さ。

ひょっとすると「本気で~」と発言している人は、事前の期待と結果の落差に気持ちの行き場を見失っちゃったのかな、と推察し始めています。最大のチャンス!みたいな煽り方だとライトユーザーは本当にそうか?と疑う材料がないでしょうからね。凱旋門賞という大きなイベントですから、マスコミ側も煽ってなんぼという側面はあるのでしょう。ただ、過剰に煽った場合、必要以上にがっかりする空気も蔓延しそうですからね。どのくらい期待がかけられるのか、ヘンに煽られずに冷静に批評する態度が主にファンの中から失われないように願っているところです。



JRAの姿勢。

広く日本競馬の価値をアピールするという姿勢があるならですが、廃止された海外遠征時の助成金を多少条件を変えてでも復活できないものか、という点は書いておきたいと思います。実際に支給されることで財務的な助けになるでしょうし、金銭面と並行してJRAがどういった価値観に重きを置くかが表れる場面とも思っていますでしょう。海外遠征行きたければどうそ、という我関せず的な態度は業界全体にとってきっと建設的ではない、と受け取ってほしい。輸送費の一部補助だけでも全然役に立つと思うんですけどね。

なぜ香港やオーストラリアへの遠征が続くのか、そのトレンドをしっかり分析するなら、あるいはまだ見えていない助成の必要性が見えやすくなるのでは、と思っています。



参考にした雑誌、サイトを紹介しておきます。

雑誌は以下のとおり。
優駿 2014年11月号
競馬ブック 10月18、19日号
Gallop年鑑2014

上記紹介以外のサイトはこちら。
トレヴ | 2014 フランス 凱旋門賞 現地取材レポート | 日本馬の世界挑戦!現地レポート | お楽しみ | JBISインターネット情報サービスJBISインターネット情報サービス

凱旋門賞、フランスのトレヴが連覇。6着が最高の日本勢、完敗の内実。(1/3) [沸騰! 日本サラブ列島] - Number Web - ナンバー

悔いと杭 | 松田幸春の辛口競馬ジャッジ | 競馬ラボ



最後に。

少なくともオルフェーヴルの2度の2着で、適性を見極めたうえであれば、日本馬のトップレベルが主要国のG1を獲れるだけの状況にはきているのでしょうね。その見立てがあるぶん、もはや凱旋門賞にこだわった遠征はその役割を終えているように思い始めています。いや、行かなくていいとか勝たなくていいとは思いませんけどね。

思うのは現場のリーダーに強い思い入れと十分な経験、そしてリスクに対する備えが十分あるかどうかが、遠征の成否を左右する可能性。池絵師、二ノ宮師、角居師などの周到さは、様々な媒体で確認できますのでそちらに譲りましょうか。前向きな手探りはぜひ続けていただきたいと思う次第です。

今年もロンシャンに挑戦する陣営がでてくることを楽しみに、まずはドバイ登録馬から追いかけていくことになりそうですね。エピファネイア、ワンアンドオンリーが直行するらしいですし、京都記念ではキズナとハープスターがぶつかるようですし。わくわくしますねー。


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