2016.10.18


ヴィブロス、きれいな差し切りでした。

2ハロン目で突っ込んだ分、1、2コーナーで先行勢と待機勢に馬群が分かれていましたが、後方馬群の先頭に収まっていたヴィブロス。終始外目を追走したことも意図していたようで、プレッシャー少なめのままスムーズに直線に向くことが出来ました。上がり33.4はパーシーズベストと並んで最速。1コーナー前後は外から交わされていったことで力んだ追走になっていましたが、スタートからポジションを下げるような引っ張り方は見られなかったと思います。福永のエスコート、お見事でしたね。

ヴィルシーナのヴィクトリアマイルはどちらも買えませんでしたが、妹のG1制覇は何とか当てることができました。タテ目を押さえる程度でしたけどね。


公式レースラップです。
12.4-10.5-12.9-12.2-11.9-12.6-11.7-11.4-11.3-11.7

クロコスミア岩田の逃げ。この逃げが絶妙だったと思っています。2ハロン目でグッと速めてから、3ハロン目でグッと緩める上げ下げ。ちょうど1コーナーに向けて突進し、コーナーに入ってから緩める流れですから、スタートダッシュで気張りたくない人馬に取っては難しいペースになったことでしょう。

緩急のあるラップは後続への牽制。捲りにくい流れですね。1000m通過してから一度緩めて、そこからは長くスパートする戦略。岩田には瞬発力に見劣る見立てがあったのでしょう、クロコスミアの能力のどの部分で勝負するかがよく表れているラップなのではと思います。

距離もコースも異なりますが、こうしてペースを支配して逃げ切ったのは昨年の桜花賞。大きな組み立ては相似しています。戴冠したレッツゴードンキには阪神の直線で10秒台のラップを踏む力がありましたからね。そしてそのペースにスポイルされた1番人気はルージュバック。前半後方に置かれる展開から、勝ち馬と変わらない上がりで順位を上げられませんでした。

二の轍を踏んだ、と断言はできませんが、1番人気ビッシュのスポイルもまたルージュバックに相似しているといってよいように思っています。スタートからしばらく、手綱を引くことでポジションを調整、その分の後方待機となってしまいました。馬体重がない分、たとえばカラダを張って横のポジションを確保するのも難しかったでしょうね。そうしてポジションを下げる間に、岩田のペースが着々と作られていきました。

戸崎も1000m過ぎに少し動いたあたり、緩んだところを的確に捉えていたようですが、前半に生じたディスアドバンテージを埋めるには至りませんでした。紫苑Sのような鮮やかな捲りは不発。あるいは、あの鮮やかさが岩田に対策を練らせたのかもしれません。

ルージュバックの桜花賞について、戸崎はポジションを求められなかったことを悔いていました。優駿のインタビューだったと記憶しています。今回はそれを活かせなかったのか、やむを得なかったのか。

初めての輸送、他馬の厳しいチェックなども敗因として挙げられそうです。このあたりは今後のレースの中で見えてくるでしょうか。

…いやー、これだけのことが事前に整理されていれば、ビッシュを強く本命視することはなかったかなーなどと、予想の段階の自分に照らして目下反省中でございます。ダメですよ、安易に戸崎はフツー(アンカツさんですね)とか言っては。ポジションが取れなかったことと最後はビッシュ自身があきらめてしまったことは、フジの解説で岡部さんが指摘していた通りだと思っています。残念でした。


パールコードもまた、よく立ち回っての2着。ヴィブロスとは瞬発力の差でしょう。直線で大きく蛇行していたのはパールコードなりの踏ん張り方とも、鞍上の横の動きへの制御不足とも。ヴィブロスの体幹といいますか、バランスのよいフォームとは対照的でした。

終わってみると紫苑Sで不利を受けた馬のワンツー。中山の馬場がエクイターフになったことで京都のG1との連動性が変化しているのかもしれません。ディーマジェスティやロードクエスト、中山で結果を出した馬の評価にも気をつけないといけないかな。




さて、回顧記事をひとつ引用します。競馬ブックのコラムです。
秋華賞回顧|競馬ブック CPU泣き笑い

ジュエラーの分析はこちらを参照するのがよいと思いました。トップスピードにのせるまでにいわゆる助走距離を要するタイプ。それがわかっていたからこそ、桜花賞の待機策であり、ローズSでの先行策であったと理解をしているところです。


一方で、気になる表現がありました。ちょっと長くなりますがよろしければ。

今回は馬の力、スピードといった競走馬の本質的な能力を競うレースではなく、日本競馬の特徴である直線ヨーイドンの競馬であったといえます。


90年代後半に「スローペース症候群」という語り口がありましたが、その時のニュアンスとも近い指摘でしょうか。スプリンターズSの投稿ではスローペースに苦言を呈する記述も見られますし、その後に「世界に通じる強い馬作りの観点からは少し不満の残るレース」という表現からは今年の凱旋門賞の結果も背景にあるように受け取れます。

何といいますか、トップスピードとそこに到達するまでの加速力を競う(いわゆるヨーイドンな)日本の競馬が、端的に世界に通じる馬作りにならない、という指摘なら、それは少し大まかに過ぎるのではないかと思っています。

云わんとしていること、危惧していることも察するところではあるのですが、スローペース<ハイペース、日本<世界、という端的な図式で語っているように読めてしまうのは何とも残念でして。

例えば、ロンシャンの不良馬場でエルコンドルパサーを負かしたモンジューを府中の馬場でスペシャルウィークが打ち負かす構図。

例えば、2008年の秋の天皇賞、レースを通して少しも緩まないダイワスカーレットの逃げは、ラスト1ハロンの失速ラップをウオッカと粘りあう素晴らしいスピードの持続力勝負を生みました。一方で2013年のジャパンカップ、ジェンティルドンナが凌ぎ切った上がり勝負は3ハロンにわたるトップスピードの持続力勝負であったでしょう。

絶対的な能力の拮抗は、往々にして適性の差で決着することが多いと思います。

例えが適当かはアレですが、レースの質が異なってもどちらかの価値が劣るということではないと思うんですよね。常に勝負は相対的なものでしょうし、この勝負のバリエーションを生み出していること、それが続いていることが日本競馬の最大の特徴であって、「世界」と端的に比較してしまうのは実にもったいない議論であると思っています。

また微妙な例えが浮かんでしまいましたが、6人制のバレーボールで世界を獲ったなら、ビーチバレーの世界戦にチャレンジすべき、みたいな議論はピント合っていないですよね。…単一の物差しで測るものではないわけで。足元のグリップ力もスタミナの奪われ方も全然異なるでしょうから。同じバレーですが、異なる競技であるわけです。

日本以外の国では、また異質な基準で馬を競べているという理解からスタートすることが肝要ではないでしょうか。海外遠征は常に異種格闘技戦。府中とロンシャン、シャンティイは同一線上にはないわけです。その難しさに挑んできた歴史とノウハウの蓄積は尊いものと考えるべきでしょう。今年はマカヒキがその恩恵に与りましたよね。


ヴィブロスが海外遠征するならどこが適当でしょうか。世界を見渡して、適性の近いところを見定める議論が日本のマスコミ、ファンを巻き込んで進んでいく方が日本競馬のためには建設的と信じます。

…最後は秋華賞の回顧じゃなくなってしまいましたが、ひとつ前の凱旋門賞の記事はそのあたりの価値のギャップについて意識しながら、ある意味抑えて書いていた分、しっかり触れておきたくなってしまいました。すみません、面倒な議論でございますね。


マカヒキの特徴が活きるレースはあるいは愛チャンピオンSだったのでは、みたいな議論を楽しみたいと思っている次第です。また例えがアレですかねぇ。


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