2016.12.04


キタサンブラック、磐石の逃げ切りでした。

予想のキーはワンアンドオンリーの出来でした。パドックを大きく柔らかく周回する姿は、近走になく見栄えのするものでした。この出来なら田辺が前々を窺えるはず。その場合の1コーナーの入り、そして先行争いのイメージがこれでまとまってきました。

同じくよく見えたキタサンブラックはスタートから前目で他馬の出方を見ながらの先行策、リアルスティールは外々を回りすぎないよう先行策で内目のラインを狙う。このあたりは特に奇をてらった読みではないでしょう。

武豊、田辺、ライアン・ムーア。このジョッキーのいずれかが1、2番手を抑えるなら、道中のペースが破綻する可能性は低いでしょう。

枠順と力の差でキタサンブラックが先手を取った場合、田辺とムーアが番手に控えるわけですから、それは後続のペースに蓋をする役割を果たすはず。その前を走る武豊がペースをコントロールするキタサン有利な展開が作られていくのでは、と読んでいました。もちろん確証はないですし、ワンアンドオンリーが強い逃げを求める可能性もゼロではないですからね。

…いやー、1コーナーに向けてその3者が雁行しようとする様はかなりアガりました。ほぼ読み通りということもそうですが、全員勝負にいったと受け取っていましたので。

ジャパンカップで1番人気の逃げ切りを見ることができる、という願望込みのキタサンブラック本命でした。満足度は最上位にあたりますね。概ねの読みが当たりつつ、人馬のパフォーマンスは想像を超えてくるという。素晴らしかった。


公式レースラップです。
13.3-11.3-12.6-12.3-12.2-12.5-12.7-12.3-11.9-11.2-11.4-12.1

2ハロン目の11.3。武豊のけん制が強く効いたとも、田辺がギリギリまでキタサンをけん制したとも言えるラップ。そこから12.6まで急に減速しますので、ムーアより後ろはじたばたしない方が賢明、という状況にあったと思っています。

天皇賞春でみせたスピードの持続と差し返す粘り。宝塚記念では荒れ馬場のなかの粘りこみ、ついてきた先行馬を返り討ちにしています。京都大賞典では一転して機動力と切れを披露。その都度の着順より、これらのパフォーマンスの累積が他の陣営には重くのしかかっていたことでしょう。これまでと同様の展開と結果が繰り返される予感があっても抗しきれない強さ。宝塚記念の2番手はほかならぬワンアンドオンリー、天皇賞の3着はシュヴァルグランですからね。

道中楽にいっているのに他馬は何故追いかけないんだという声があるならあまりに粗雑。「楽に逃げられた」のではなく「誰も追いかけられなかった」のほうが実態に沿った表現ではないでしょうか。

相撲できれいに例えられるかアレですが、貴乃花や白鵬が四つに取って土俵際までグワッと寄ったときに、力が抜けて体が起きてしまう力士がいるように思っていまして。この体勢になったら抗し切れない、敵わない、ムリムリ、という心境があるものと察しているのですが、この相手に諦めを起こさせる一連の態度というのは競馬でもまた同じではないかとの考えに至っております。

対戦前から半ば諦める、という態度の醸成。この相手に諦めを強いる競馬を「馬に力があったので」くらいのコメントでやれてしまうのが、200勝していた頃の武豊が常に怖かった所以ではないかと思っています。…条件が整えば健在、ということなのでしょうね。


3、4コーナー中間から武豊は手綱を多少上下させていました。12.3-11.9-11.2という加速ラップを踏まえると、直線坂下に向けてギアを上げていったことが分かります。ひとつ早いペースアップ。もう後続はこれを追いかけるしかありませんね。直線入口付近、早仕掛け「させられた」後続各馬の手綱がガシガシ動いている中、武豊の手綱は必要最小限の所作。道中のエスコートが上手くいったことが圧倒的なコントラストを作り出していました。

そうそう、武豊は「残り300までは最後の力をださないようにしよう」とのコメントを残していますが、ラップを見る限り、トップスピードにのせるのを待っていたのではなく、もうひと踏ん張りさせるための合図をしっかり待ったという意味なのでしょう。ここからラスト1ハロンを1秒以上失速しないこともまたキタサンブラックの強さですね。

機動力も加速力もスピードもスタミナもラップ構成も。高いレベルで実績を積んできた出走馬をさらに上回るパフォーマンスならこれ、という勝利の形。敵わないと思わせることもまた強さのうちでしょうね。チャンピオンの競馬、横綱競馬、まさに「これが日本の競馬だ~よ~♪」ですねw 場内で「まつり」を聞きながら、なにやら日本の競馬だからこその展開と勝ち方、象徴的だなぁなどとと思っておりました。そしてその勝者には、やはり第一人者こそふさわしいですね。

次走、有馬記念はキタサンブラック対サトノダイヤモンド。言い切ってしまえるくらい、2頭が抜けているように思い始めています。もちろん実際の予想の段になったらいろいろ変わっているかもしれませんが、このチャンピオンを中心に語れる競馬は素晴らしいですね。週中、福島記念を逃げ切ったマルターズアポジーが有馬出走を表明しましたので、展開予想に面白いファクターが加わったと思っています。久々の重賞制覇を果たした武士沢の戦略かぁ。

そしてレース後に思ったこと。ブラックタイド本命で惨敗した2004年の皐月賞、その借りをようやく返せたなぁと。12年越しのリベンジ。いまの自分だったらあのブラックタイドは無印にしただろうなぁ、などとモカチョコサンデーのアーモンドを食べながら謎のセンチメンタル感満載になっておりました。まぁ、予想の段階ではそんなロマンな態度は皆無でしたけどね。


2着サウンズオブアースは中団の外を待機して長くいい脚を使いました。昨年の有馬や日経賞に比べて惜しい2着ではありませんでしたが、よいパフォーマンスではあったと思います。G1では3度目、重賞通算では7度目の2着。なにやらステイゴールドなかほりを嗅ぎ付ける向きもあるようですが、常に馬に集中力があることが決定的な違いでしょうか。東京優駿と2度の天皇賞春を除くと大きく崩れない堅実派。戦歴の印象はよく似ていますが、キャラは真逆のような気がしております。


3着シュヴァルグランはサウンズオブアースの直後を追走。加速に遅れた分、ゴール前にようやく上位まで押し上げるような形になりました。前々で運べていたら、という意見も目にしていますが、前にいける馬ならそう選択しているでしょう。

昨年の札幌500万下、京都新聞杯8着後の仕切りなおしの一戦。内々で運んだモレイラ騎乗のアルバートが4コーナーで巧みにコースをつくって着差を広げた後、ようやく折り合いに専念したシュヴァルグランが脚を伸ばしてきています。当時の体つきやフォームはヴィルシーナなそれ。あの時期に気持ちのまま走らせたら、弱々しい先行馬のまま頭打ちになっていたような。ハーツクライの成長曲線に逆らわないように戦歴を重ねていったことがあの馬格を作り出したように思っています。新馬から比べれば20kg弱増えていますからね。

ハーツよろしく先行策を身につけるならこれから?でしょうか。少なくともいまのキタサンブラックとデュエルで勝てるようなスタートは仕込んできていませんからね。せめて先のアルバートのように(ステイヤーズS連覇しましたね)もうひとつ機動力が身につけば。有馬に向けては主戦福永がどうなるかも懸念事項でしょう。奥さまのブログでは「早期に」復帰できるとのコメントがありましたが、鎖骨骨折ですからね。大事に至らなかったのはよかったと思いつつ、乗り替わりになってしまった場合の評価は難しくなりそうです。


4着はゴールドアクター。少し離れていましたが、キタサンの後ろで立ち回る野心的なポジショニング。吉田隼人の思いの強さはしっかり表れていたでしょう。道中の追走は終始、首に力みを感じるフォームでしたから、あれ以上前を意識した場合、折り合いを壊してしまっていたかもしれません。

太めが敗因という陣営のコメントがありました。オールカマー以来という間隔は納得させるようにも思いますが、パドックの見立てではG1を勝ち切る排気量には少し欠けるというもの。さらに天皇賞春と同様のハイテンション。おそらくはいまのゴールドアクターなりに仕上がっていて、それがテンションの高さにつながっていたのではないかな、と想像しているところです。

有馬記念、キタサンが大外でゴールドアクターが2枠あたりだったら。ジャパンカップで生じたアドバンテージの関係性は入れ替わることになるのか。個人的には力の差は広がっているような気がしていますが、その答え合わせをすることになるのでしょう。


5着はリアルスティール。ライアン、出していきましたね。より外差し馬場なら控える判断にしたのでしょうが、内から3頭ほど空ければ内外変わらない馬場。9Rのトーセンベニザクラの逃げ切りが象徴的だと見ていました。これだと外々を回るのはただ距離ロスでしかないですからね。ドバイターフの手応えも背中を押したであろう先行策となりました。

3、4コーナー中間でラストインパクト川田が早めの進出。交わされてしまうリスクに対応しながら徐々にスピードアップせざるを得ない流れ。それを見て、真後ろにいたイラプトの鞍上ブドーが直線を待たずに点火。おそらく流れに乗せようしたであろうアクションでしょうが、この真後ろの動きにも煽られていた部分はありそうです。ただ、残り600を切ってからの仕掛けは能動的なもの。周囲の動きにのまれず、逆らわず、利用するようなタイミングだったと思っています。でも、早かったんでしょうね。

共同通信杯が鮮烈だったこと(皐月賞まではドゥラメンテより評価がありましたよね)、ドバイターフの勝利がありますのであまり語られていませんが、G1では3回、重賞通算では5回の2着がある馬。シルバーコレクターな一面があるといってよい戦歴です。個人的には相対的に少し決め手に見劣ってきたタイプという見立て、ジョッキーの立ち回りで着順を取っているイメージがあり。リアステファンには怒られるかな。G1で負けた相手はドゥラメンテ、キタサンブラック、モーリスですからね。

このあとは有馬を回避してドバイターフ連覇が目標になるとのこと。得意な舞台で勝負するのは妥当な戦略、連覇成ってほしいですね。


ディーマジェスティは13着惨敗。パドックでもよくは映らず。一枚厚めの馬体、歩幅は小さめ、時々小脚をつかってどこか不安げな表情にも見えました。調教ではそこそこ動いていましたが、それでこの仕上がりとは、と首を傾げておりました。

とはいえ、着順ほどパフォーマンスは落ちていないとも思っています。上がり35.0はゴールドアクター、リアルスティールよりコンマ1秒上回るもの。後方のポジショニングが着順を大きく押し下げた要因と見ています。ちょうど金鯱賞のヴォルシェーブが同様のスポイルに嵌ってしまっていましたね。上がりは勝ったヤマカツエースとコンマ1秒しか違いませんので。

平松さんの近著「栄光のジョッキー列伝」で二ノ宮師が取り上げられています。レースを点ではなく線で捉える、ひとつのレースの結果で一喜一憂しないことがエピソードを通して紹介されていました。今回の出来と敗戦も先を見据えた線で捉えているのか、取材を通してきっちり引き出せるひとがいるといいのですけどね。有馬回避の判断も既報ですので、まずはしっかり休んで、春先には強い姿が戻ってくることを待ちたいと思います。



最後に。

ふぅ。ずいぶん投稿が長くなってしまいました。週中に書き始めてみたものの、日本ウマ科学会に顔を出したり、ちゃんと奥さん孝行したり、あらおやまぁな業務の数々に反応したり、などなど忙しくしているとなかなかイメージを言葉にする時間が確保できず。ただでさえ書き記しておきたいことがいろいろ脳裏に浮かんでいましたので、ついにチャンピオンズカップ当日までペコペコとキーボードを叩いてしまっている次第です。

ジャパンカップの立ち位置についての記事やコメントも散見された週でした。多くは国際競走としての在り方の見直し、という切り口でしたが、おそらく前提となる態度がいくつかに分かれるように考えていまして。このまま施行し続けることに疑問をもつ方が増えている、というのは共通点と見て間違いなさそうですけどね。実際、天皇賞秋からジャパンカップに向かったのはリアルスティールとルージュバックのみ。関係者間でもローテーションとして連続性があると見ていない状況はあるようです。

引き合いに出すのが適当かなと思いついただけですが。96年のサクラローレル、ジャパンカップをスキップしたときには結構叩かれていたはずなんですよね。秋華賞から参戦したファビラスラフインは大善戦の2着、反対に大きく評価をあげていました。香港国際競走は1994年からですから、議論になっているいわゆる競合の問題もまだ存在しなかった頃ですね。

「秋古馬三冠」の賞味期限、みたいな観点でぐるぐる考え事しているところです。年末に時間取れたら、ですかね。まとめたいと思っています。

関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://keibadecade.blog98.fc2.com/tb.php/953-f675e2c2