2017.02.05


2週前の話になりますが、まとめておきたいと思います。

毎年、馬事公苑の程近くで開催されている公開講座。例年より開始時間が早まった様で(15::00開始)予めAJCCと東海Sは「見」と決め込んでの参加でした。とはいえ会場に着いてからPATでちらっと買っちゃってましたけどねw

毎年恒例になりつつありますが、これまでのアーカイブがありませんので、テーマだけ備忘録的にテキスト転載しておきます。若干体裁がばらついていますが原文ママということで。


PART1 タイトル「ウマの歩行運動を理解するためのアレコレ」
講師 富山拓磨先生(日本装削蹄協会)
PART2 「脱力と強大プレスの繰り返し!-ウマの下肢部の動きのメカニズム-」
講師 日本装削蹄協会 理事 青木修


開講直前のアナウンスで録音撮影はいいけど無断転用はNG、と注意があるのも毎年恒例。今回も要点を書いておく形にしようと思います。


まずは初登壇の富山先生から。

重心、立つ、歩く・走るという動作。大きく3つのテーマに分かれて講義が進みました。

まずは「重心」。馬の重心の位置はどこでしょうという問いかけから。非常に具体的に「肩甲骨と骨盤の延長線上の交点から垂線を引いた」あたりになるため、昔から語られていた肩と腹の中間あたりよりは後ろになる、とのこと。乗馬でぴったりの位置に乗ると、馬体の真ん中くらいに鞍を置くことに。鞍壺を意識して鞍を置いてみましょう、というコメントもありました。実は鞍壺という言葉は聞き馴染みがなくその場で調べる格好に。競馬ファンならではの知識の偏りでしょうかね。

一方、競馬のジョッキーは重心より前にカラダを置いていることになります。これは前に速く走るために前へ前へ重心移動するには理にかなっている、ということと理解しました。また馬術の馬は首が上付きのほうが、競走馬は前付きのほうが好まれるという話もありましたね。タイキブリザードしかりシアトルスルー系はジョッキーでも乗りにくい首さしのようですが、という質問はさすがに飲み込みましたw

首の重さが80kgくらいという話から、合成重心の考え方に。合成重心の計算方法を紹介しつつ、馬体の動きのなかで重心がどう移動していくのかを、スライドで模式的に見せていただきました。首と胴体を積み木に見立てていましたね。これは図解したほうが分かりやすいかな。非常に腑に落ちました。


あー、ひとつ。取り扱う内容からしてやむを得ないと思っているのですが、全体を通じて専門用語が多かった印象があります。つまり予備知識を要する話が多かったわけなのですが、用語の解説まで含めると相当時間が足りなくなるでしょうし、かといって平易な表現では肝心なポイントを伝え損ねてしまう懸念もあるでしょうし。

受け手のリテラシーをどのあたりに設定するか。Web業界で身を置く自分もなかなか悩ましく日々向かい合う部分ですので、知的好奇心を刺激されつつ、ちょっと心配しながら見守っていました。横にすわっていた小学生(おそらく乗馬をしているのでしょう)のリアクションが割と薄かったんですよね。わからない世界をわからないまま体験するのも悪くはないのでしょうが、難しいところです。

例えば、「立つ」話の中ででてきた支持基底面という言葉、馬だと四肢、人間ですとつま先とかかとを頂点にした四角形のことなのですが、支持基底面、カタイ言葉ですものね。でもこの四角形の面積が大きいほうが安定しやすい、ただし馬の背中を丸めると腹筋にテンションがかからずに立てるので四角形は若干狭くなるが馬は立ちやすい、とか。ほら、興味深い話につながるわけですよ。

ちなみに、洗い場につないでおくときなどによくわかると話されていたのですが、後脚を交互に上げて休ませている状態。四角形が崩れるとバランスが悪いため(重心が支持基底面の外に出ると立つバランスが取れなくなる)、接地している後脚を馬体の真ん中にずらして自然と三角形をつくっているとのことでした。


「歩く・走る」は脚が動く順序が中心。常歩、速歩の違い、側対速歩だと左右にぶれやすくいわゆるらくだ酔いを起こしやすい、などなど。対照的な走法の例としてドッグレースのスタートダッシュの映像をスローで見せていただきましたね。犬はすごくトモがはいってるね、というジョークがばっちりウケるのはこうした講座ならでは、ですね。

一点、反手前の前脚に加重(=負荷)がかかりやすいという認識があったのですが、競走馬に関しては手前の脚と差がなくなるようです。障害を跳んで着地、という乗馬のほうが反手前の前脚に負荷がかかりやすいとのこと。個別のシチュエーションにも依るのでしょうが、ひとつ参考になる知識でした。頭に浮かんでいたのは京成杯のマイネルスフェーン。端的に故障の原因を語るのは易いですよね。



そして青木先生。

昨年、定年を迎えて最後の講義になるという仄めかしがあったと記憶していましたが、今年も来ちゃいましたというお茶目なトーン。聴衆の皆さんのリアクションでそれが好意的に受け止められていることが伝わりました。20回すべてで講義されていますが、これからも続きそうですね。

お決まりの、乗り手が馬を壊すことのほうが要因として大きいという話。装蹄に起因する問題を科学的にアプローチして、装蹄側のいわゆる「冤罪」を主張されてきたことを改めて話されていました。実際は冗談のトーンをしっかり残しながら雑な表現とでかい声、みたいな。かえって装蹄側の難しい立場が伝わってきましたね。確かに装蹄がわるい、とは言いやすいですものね。


脚にかかる負荷については、体重ではなく荷重と表現しなければいけない、というのが導入の話でした。運動で生じる力の移動も考慮する必要がある、ということですね。

高齢の乗馬は下肢部、球節にトラブルが起きやすいという話から、いかに馬は脚にかかる荷重を「抜いて」いるのか、という本題にはいっていきました。


前肢、後肢それぞれの骨格に注目。前肢の膝部分は骨と骨の角度がまっすぐで、力の逃げ場が少ないとのこと。競走馬の故障、1/3は前膝だそうです。その一方、この真っ直ぐな形状であることが筋力を使わずに長時間の起立を可能にしている側面もあるようです。構造上必要なまっすぐさが故障のポイントにもなる悩ましさ。


一方のトモですが、そうですね、受講者全員が立って中腰になる光景はかなり珍妙でしたねw でもまっすぐな前肢と対照的に、トモが常にこの筋肉がプルプルするつらい状態にあることはよく体感できました。

先ほどの支持基底面の件でトモを交互に上げて休める話がありましたが、この常時中腰状態に起因するのでしょうね。昔から曲飛が避けられてきたのはこのあたりなのかな、と思いながら聞いておりました。


前肢、後肢それぞれの骨格についてもっと詳しい説明がありましたが、割愛しないと終わらないので割愛で。前肢は肩の部分と球節が、後肢は飛節含めすべての関節が。いわゆるジグザグな形状であることを利して上からの荷重を上手く逸らしている、ということが要点でした。


そして球節については腱の構造含めて詳しく図解がありました。構造から腱にどのような負担がかかるか、浅屈腱の形状からテンションがかかる部位によって断裂のパターン分類があること(屈腱炎の98%が浅屈腱とのこと)、そして屈腱への対処方法まで(レース後すぐにとにかく冷やす!だそうです)話がつながっていきました。

球節の故障も全体の1/3、つまり前膝と球節に競走馬の故障の2/3が集中するという統計になっているようです。前脚、たいへんですね。


高齢の乗馬は関節が固くなって荷重が抜けにくくなる一方で、馬術競技は荷重をかけた状態で脚をねじる動きが多いから、国際馬術連盟に問い合わせてですね、というジョークが飛び出しておりましたw 講義のオチも完璧でしたねw

青木先生はホワイトボードに画を描きながら用語や構造の解説をしていらっしゃいました。難しくなりがちなことは画を描くとわかりやすいですよね。このあたりは経験のなせる業なのでしょう。



最後に。

書籍やブログなどでこうした知識に触れることは以前に比べてずいぶんハードルが下がってきていると思っていますが、直接話を聞くことが出来る機会はやっぱり貴重ですね。

まとめて読む時間がとれていませんが、競走馬ハンドブックも読みたいですねぇ。アンテナの張り方は相変わらず、来年の開催も楽しみにしています。

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