2018.02.02


年に1回開かれている関東装蹄師会による馬学講座。今年も参加してきました。

自分は通算、4回目の参加。場所は例年通り、現在は改装中の馬事公苑近くですね。

詳細はWebで、と言いたいところなのですが、これまでと変わらず、過去の開催に関するアーカイブページが存在しない状況が続いているようです。おそらく同じhtmlファイルを上書きされているのかと。以下のリンク、ではあるのですが、いずれかのタイミングで22回目の情報が上書きされてしまう可能性が。。。
公開馬学講座開催情報 関東装蹄師会 オフィシャルホームページ

というわけで今年のテーマもアーカイブしましょうかw 以下の通りです。
講師のお二人は昨年に引き続きの登壇ですね。


PART1 「愛馬の改装時期の目安と改装遅延のリスク」
講師:富山拓磨先生(日本装削蹄協会)
PART2 「後肢の動きはオートメーション! -エンゲージメントの秘密ー」
講師:青木修先生


参加した過去3回のテーマについては、個人的なメモ書きと併せてでよければ。以下のリンクをご参照ください。
more than a DECADE 第18回公開馬学講座
more than a DECADE 第19回公開馬学講座
more than a DECADE 第20回公開馬学講座


それぞれ1時間半ほどの講義、内容をつらつらと書いておこうと思います。


まずは富山先生から。

「改装」という言葉、自分には耳馴染みはなかったのですが、おおよそ想像していた内容と一致していました。削蹄と装蹄を併せた意。その適切なサイクルが今回のテーマでした。全く改装をしないケースと改装が遅れたケースを引き合いに、リスクの程度について話が進みました。

ナチュラルフットケアという表現もあるようですが、削蹄のみで蹄鉄を履かせない場合(=改装をしない場合)、やはり蹄の摩耗や損傷は大きくなってしまうようです。統計の出どころはメモし損ねましたが、野生の群れによってはその4~9割の個体で蹄葉炎に罹患しているケースがあるとのこと。…多いですね。人を乗せたり激しい運動を求められない分、罹患する確率は低いのかとイメージしていましたが、自然環境はなかなか過酷なようです。

装蹄せずに欠けていった蹄や、前掻しすぎて蹄がすり減り激痛で動けなくなった例など、いくつかの症例をスライドで紹介しつつ、「過度な摩耗からの保護」が改装が必要なポイントであることを訴えられていました。このあたりは、参加者の多くが乗馬をされている方(=日々のメンテナンスに直面されている方)という前提があるのでしょうね。

装蹄には「このマイナスを0にする」蹄の保護的な役割ともうひとつ、「能力発揮のためのオプション」というプラスの要因をつくりだす役割があることも紹介されていました。

競走馬ですと基本は路面に対してしっかりグリップすることでパフォーマンスをあげます。しっかりグリップできずすべるような動きが生じると推進力は逃げちゃいますよね。反対に後ろ脚がすべること(=グリップしないこと)が求められる場面もあるようで。ウエスタン乗馬でのスライディングストップが例えにあがっていましたね。講義を聞きながら、自分はF1でのレインタイヤを連想していました。インターフェースと摩擦係数という意味では同じかなと。


一方で装蹄するデメリットという視点も。簡潔にいうと、…いえるかなw、蹄鉄をつけたまま蹄が長く伸びてしまうことが脚元に負担をかける、ということ。

えー、ミステイクを恐れず自分なりに例えてみます。ストローをペンのようにもって、いわゆるペン先をテーブルなど固定面につけて、ストローを折り曲げようとします。短く持つと折り曲げにくく、長く持つと折り曲げやすくなりますよね。ストローを蹄と置き換えれば、…かえってわかりにくいかw

ストローでなくても長さがあってそこそこの強度のものであれば何でも。なんといいますか、球節から爪先までが長くなるほど上からの加重に対し負荷が大きくなる、ということで合っていると思います、間違っていたらすみません。

蹄の構造上、この負荷は蹄の内部で蹄骨を蹄葉から引き剥がす作用になってしまうようです(これが蹄葉炎の原因になる)。この負荷(=装蹄することによるデメリット)を回避するため、一定の周期で改装することが大事とのことでした。…伝わったでしょうか。

なお、関係者へのアンケート結果から割り出した、望ましい改装の周期はおおむね1カ月ちょっと。フットケアは毎月欠かさずに、という結論になるようですね。その他、蹄への負荷は爪先<かかとであるとか、いろいろなエピソードがあったのですが、長くなりすぎてしまうのでこのあたりで。

あ、講義の最後に、しっかり有料の講習会の宣伝をされていたのは頼もしさというべきでしょうねw



次に青木先生。

なぜこの馬学講座が始まったか、というもはやおなじみの口上からスタート。馬体のトラブルを明確な根拠なく装蹄の責任にされてしまうことがあったそうで、その「冤罪」に対して科学的分析をもって反論したい、という主旨でしたが、例年のごとく圧がすごいw 個人的にはまったく好意的に受け取っていますし、会場もいつものアレという感じで笑っているのですが、圧はすごいですw

イントロダクション的にホワイトボードに馬の絵を描かれて、背骨の説明から。

頸椎7つは哺乳類で共通、対して腰椎はサラブレッドの中でもまちまちとのことで5~7つ。まちまちなんですね、これはびっくりしました。胴長に見える馬の腰椎の数は他より多いかも、という指摘は興味深く。胴長にでる血統には腰椎の数に特徴が?…パドックでは数えられないですけどね。

頸椎の動きは自由度が高い一方で、胸椎→腰椎→仙骨に至るいわゆる「背骨」はがっちりとしていて曲がらない構造になっています。青木先生から言わせると、この背骨の固さで馬はひとを「乗せちゃった」そうで。背中がぐにゃぐにゃだったらよかったのに、というあたりは特有の馬への愛情表現のようです。確かに、ひとを乗せること自体が負担ですものね。

ひとを乗せていることの影響から、胸椎と腰椎、腰椎と仙骨の間に負荷がかかりやすいそうで、ほとんどの馬がその部位に変形性の関節炎を発症しているとのこと。そこでいう「ほとんど」が乗馬を指すのか競走馬を指すのか、はっきり覚えていないためちょっとモヤッとしておりますが(先生がデータ元を明言していなかったような…)。ただ、鞍を置いて乗ることの影響を具体的に聞いたのは初めてかな、その意味では貴重な見解でした。

そこから、ブリティッシュの乗馬が何故後ろ重心なのかと、対してエンデュランスが前重心である理由とを対比。このあたりは長くなりすぎますのでちょっと割愛しましょう。馬の負担を軽くするには前重心なのだそうですよ。

とはいえのっていると鞍は後ろにずれていくわけですね。この理由をシンプルに表現されていました。馬の重心は馬体を横から見ておおよそ肋骨の12~13本目あたり(高さは胴の中心あたりですね)。そこを中心に前後の脚が運動するため、前目につけた鞍もその重心によっていってしまうそうです。なるほど。個人的にはドバイワールドカップのカリフォルニアクロームで脳内のイメージがいっぱいになっていました。あれは危なかったですからね。

本題はここから。前脚の肩から肘関節の角度と、トモの膝蓋骨より上、腸骨と大腿骨の角度。ちょうど不等号の記号が対照しているように模式化できますが、このミラー構造をパンタグラフに例えておりました。自分はピンときましたが、電車の屋根にあるひし形のアレですね。上下の衝撃緩和にはちょうどいよい構造とのことでした。

で、その後ろ脚ですが、蹄洗(洗うことですね)の際の脚の上げ方を例にとりながら、各関節が一斉にワンセットで動くことを指摘。確かにトモを引き上げるときは、どこかの関節が個別に動くことなく一連の動きになっています。この動きを指してオートメーション化と呼ばれていました。確かに球節から先だけが急に前を向いたりはしませんものね。

講義では腱がどのように連動して収縮していくかを詳しく解説されていました。動き方が決まっていることで、シンプルに推進力を発揮しやすい構造になっているとのこと。引き合いに出されていたのが車の後輪駆動でした。後輪駆動者は前輪が方向舵、後輪が推進力と役割が明確。馬も基本的にはトモで推進しますものね。

馬の脚の故障は前肢と後肢でおよそ7:3。ただし後肢は一度発症すると長引く傾向にあるそうで。

馬場馬術は特に後ろ重心であることから、後肢への負荷が大きく、こういった構造を理解したうえで、日ごろのケアや適切な筋力アップに努めてほしいという締めくくりでした。

あ、講義の合間合間に、ご自身が監訳された『馬のバイオメカニクス』をがっつり紹介されていましたw ツイートした通りその場で買ってしまいましたから宣伝効果は抜群だったかなw



最後に。

こうしたテーマは専門書で読むことはできるのですが、専門家の方がとりまとめて話されるとやはり理解しやすいものですね。今後も可能な限り参加したいと思っています。

ただ、日曜メインを犠牲にしないといけないんですよね。PATでちらっと買っていたのですが、週中の雪の影響も含めてとても読み切れず。ノンコノユメもファインニードルも評価を下げてしまっておりました。馬学講座の課題と言えばそのあたりかな。贅沢を申しておりますです、はい。

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